第17話 いろいろな嵐
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辺境巡りの可能性がある。シトレもそうそう人事に干渉は出来ないだろうし、グレゴリー叔父はああ見えてかなり潔癖なところがあるから呼び戻すという期待はできない。
故に俺は査閲部で仕事を真面目にこなしつつも、時折老勇者達の経験談を聞きまくっている。マクニール少佐には砲術、フィッシャー中佐からは艦隊運用技術、他にも誘導弾・地上戦・後方支援・物資調達・野戦築城などなどなど、ここにいるのはその道で苦労して食ってきた人ばかりだ。中には気むずかしく偏屈な……むしろそんな人ばかりなんだが、丁寧に教えを請うてみるとフィッシャー中佐の言うとおり、野卑だが紳士だった。
二月。周囲の好意で、夫人を職場に呼んでの花束贈呈に、さすがのマクニール少佐も目を赤く腫らしていた。
「こいつがボロディン少尉だ。如才ない孺子だが、いつか必ず統合作戦本部長になる。俺が保障する」
夫人に俺を紹介する時、少佐がそう言ったことが気恥ずかしかったが、夫人の穏やかな笑みと深いお辞儀に、敬礼する手が震えたのは言うまでもない。他にも数人が査閲部を最期に退役することになり、その日の査閲部は殆ど仕事にならなかった。が、翌日から別所より転属されてきた人達への教育やらなんやらで、あっという間に日常へと戻っていく。
フィッシャー中佐は二月の人事で異動はなかった。中佐には悪いが、俺としてはそれが一番嬉しい。本人も苦笑していたが、まんざらでもない様子で教えてくれる内容が段々と濃く、マニアックになってくる。そういったことを休日、自宅で寛いでいるグレゴリー叔父に話すと。
「……シトレ中将の贔屓も程々にしてもらわないとなぁ」
と、背後で料理をしているレーナ叔母さんには聞こえない声で呟いていた。
そんなこんなで仕事に聴講にと忙しくも楽しく平和な日々を俺は送っていたが、嵐は突然やってきた。
六月一八日。久しぶりの休日。グレゴリー叔父が遠征で出張中。フィッシャー中佐は夫人とお出かけ、他の同僚もそれぞれ少ない休みを満喫している為、聴講もなくぼんやりと数少ない私服に着替え、レーナ叔母さんの舵を手伝いつつ、末妹のラリサの勉強を手伝っていた。
午後一時。五歳とは思えぬラリサの、数学に対する貪欲な学習意欲にタジタジになりながら、レーナ叔母さんと作ったサラダ、ボルシチ、水餃子に紅茶と昼食を準備していく。グレゴリー叔父が海賊討伐遠征で不在、アントニナは朝から行方不明、イロナはジュニアスクールの合宿で不在。なのに、コースが五人分用意されているのに俺は不審に思ってレーナ叔母さんに尋ねた。
「あぁ、それはね。アントニナの友達が今日、こっちに遊びに来るのよ。何でもその子のお父さんも軍人さんで、しかもグレゴリーと同じ少将だそうよ。それで転校早々アントニナが意気投合しちゃったらしくてね。それからというも
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