暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
2ndA‘s編
第十二話〜歩み寄る結末〜
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二流と言った格付けをする以前の素人であることから、自分の内には切れる札が一枚も無いことを再確認するだけであった。
 相手が管制人格である彼女であれば、まだ対人戦である為渡り合うための案も出てくるのだが、途方もない量の魔法を行使し迎撃を行うシステムに対する知識は流石のライも持っていない。例え迎撃パターンをある程度把握したところで、そもそも使ってくる魔法の対処の仕方すら知らない場合があるのだから。
 追い詰められた時に感じるピリピリとした感覚に浸らされながら、玉砕覚悟もしなければならないかなと無謀な案しか出なくなったのと、それが聞こえたのは同時であった。

『――じを、――く―――きこ―――』

 ノイズ混じりの音声がその結界の中でやけに大きく響いたように聞こえた。
 その通信に返事をしようとしたが、自らの視覚が先ほどと同じ光を捉えたことによりそれも最低限しかできなかった。

「今は忙しい!アクセル!」

 思考ではなく、本能に従いライは叫ぶ。
 口から出た始動キーにより、魔法が起動する。いつもよりも半テンポ遅れながらも足元に魔法陣が展開されると、それを置き去りにしながら彼の身体は数十メートル後方に移動した。
 周りの風景がコマ送りのように前に流れていく。すると、移動を開始した瞬間にはもう迫っていたのか、ライがほぼ跳ぶような移動を終え着地する前に展開されていた魔法陣のあった場所が“左右からの”光に呑まれるのを流れる視覚の中で確認した。

(砲撃位置?!)

 思考が驚きに飲まれるが、本からではなくいきなり横合いから砲撃を打ち込まれればそれも無理がなかった。

(いきなり現れた?転移?転送?そうか、あの腕の――)

 記憶の中にある自分の胸から腕の生えた映像が掘り起こされる。
 疑問は氷解するが、それは新しく生まれた夜天の書の攻撃範囲と言う問題によりすぐさま思考を塗りつぶされる。

「厄介な!」

 そう吐き捨てながら、自分から最も近い路地に飛び込むようにしてライは駆け込む。
 今のような“発射点を操作できる”攻撃をしてくる相手に、お互いの位置がわかるような場所で向かい合うのが自殺行為であるのは明白なのだから。
 夜天の書の姿が見えなくなると、ライは魔力サーチから逃げるためにバリアジャケットを解除し迷路のような裏路地を進んでいく。
 適当に曲がり角を進み、いつの間にか少しだけ開けた道に出る。その場所は飲食店が並ぶ裏なのか、ポリバケツが多く見受けられどこからか香ばしい匂いが立ち込めていた。

(……結界内でもこんな匂いがあるのか)

 人を閉ざす結界内で、どこか場違いな事を考えてそれが自分なりの逃避であることに気付いたのは随分と時間が経ってからである。

「……ハァ」

 この世界に来てからも
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