オーバーロード編
第17話 一度は信じたから A
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巴の両肩を強く掴んだ。巴は初瀬の剣幕に驚き、怖くなって身を竦めた。
「りょ、うじ、さ」
「お前、自分が何言ったか分かってんのか? 殺す気か? あいつらと一緒に、沢芽の人たちを」
「だ、だって碧沙が、碧沙がっ」
このままでは碧沙は別人になったまま、永遠に巴の下には戻らない。
「落ち着け。仮にお前があいつらと結託してヘキサを元に戻したとして、ヘキサはそれで喜ぶと思うか?」
「あ……」
喜ぶわけがない。碧沙は巴に甘いが、それ以上に公正だ。彼女一人と沢芽市民が大勢。天秤に載せて傾かなかった自分の生存を喜んではくれまい。
「じゃ、あ…じゃあ、どうすれば…ど、したら、いいの…ふ、ぇ」
視界が滲んで、厳しい面持ちの初瀬が見えなくなっていく。
「りょーじさん…どーしよ、ヘキサが…ヘキサがいなくなっちゃうぅ…っ」
「トモ――」
初瀬が巴を抱き寄せた。巴は初瀬の胸に縋ってしゃくり上げた。
逢えなくなってしまう。碧沙と逢えなくなってしまう。碧沙は巴の手の届かない所へ行って戻って来ない。
「考えよう? 考えるんだ、トモ。もっと別の方法がないか。もっといいやり方がないか」
泣いているところに言い聞かされて、よけいに涙が溢れた。
(この人は何度、わたしを正しい方向に導いてくれるんだろう。何度過ちかけたわたしを救ってくれるんだろう。初めて会った時からそう。救うつもりで、いつも救われてるのはわたしのほう)
巴はゆっくりと引いていく涙を、制服の袖で拭って、顔を上げた。
「落ち着いたか?」
「はい……ごめんなさい。みっともないところをお見せして」
すると初瀬はひどく優しい笑顔を浮かべた。
その笑顔の意味が分からなくて、巴は首を傾げた。
「いーんだよ、分からなくて」
「いたっ」
デコピンされた。久々だ。
巴がむくれて初瀬を見上げると、初瀬は、にしし、と笑っていた。
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