オーバーロード編
第17話 一度は信じたから A
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光実に地下シェルターの位置を教えた。光実だけに。
その業の深さに、貴虎はようやく、自分もエゴを持つただの人間なのだと思い知った。
「まあ、そういじめてやるな、王様よ。こいつは人間の中じゃマシな部類だ」
サガラは何かを貴虎に投げた。貴虎はそれをキャッチした。
戦極ドライバーに、メロンのロックシード。
ゲネシスドライバーを使うようになってからは、自宅に置いていたはずの物だ。
「サービスだ。弟とレデュエが成功するまで、せめて妹の体を守ってやりな」
言うだけ言って満足したのか、サガラはホログラムのように消え去った。
貴虎は手の中の、戦うための力を、ただ見下ろすしかなかった。
…
……
………
「私は光実と違ってこの遺跡から離れられない。中身が王妃でも、体は碧沙だ。何が起きるか分からない以上、すぐ守れるようそばにいてやりたい」
長い語りを貴虎はそう締め括った。
巴は震えが止まらなかった。碧沙が別人になった。碧沙がバケモノになった。ただそれだけが頭にリフレインして、脳が爆ぜそうだ。
巴はふらりと立ち上がり、玉座の壇に腰かける碧沙を見やった。彼女は不思議そうな顔をするだけで、笑いかけたり手を振って来たりしない。
「ねえ、碧沙。わたしが分からないの? わたしよ、巴よ。ねえったら。一緒に踊ったでしょう? 毎日同じ学校にいたでしょう? ねえ、碧沙」
すると碧沙――の顔をした王妃は、申し訳なさげに顔を伏せた。
(碧沙じゃない。こいつは碧沙じゃない!)
巴は長い黒髪を翻し、遺跡から走り出た。碧沙の顔で碧沙のように振る舞うバケモノなど見たくなかった。
どれくらい走ったのか。巴は“森”のどこともしれない河原に出た。
「トモ! おい、待てって! トモ!」
止まった。自分が初瀬から逃げるなどできやしないのだ。身体的にも、精神的にも。
追いついた初瀬は巴の腕を掴んで、彼のほうへ向かせた。
「落ち着けよ。インベスが出たらどうすんだ」
「大丈夫ですよ。追い払いますから」
「そうじゃなくて! ……あー、くそっ」
初瀬は巴を「ただの女の子」扱いしてくれる。ドライバーもロックシードも持っている巴なのに、非力な少女のように接してくれる。それがどれだけ嬉しかったか。
だが今は、ひたすら辛い。
どんな外的刺激も、傷口に塩を塗るように辛かった。
「わたし、光実さんのとこに行きます」
「な、いきなりどうしたんだよっ」
「王妃が復活すれば碧沙は解放されるのでしょう? だったらわたし、光実さんに付きます。光実さんと手を組んでるオーバーロードと一緒に。誰をどれだけ犠牲にしたって」
「巴!!」
初瀬が
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