オーバーロード編
第17話 一度は信じたから A
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
翻弄。それが最も正しい言葉だった。
シグルドが放ったソニックアローも、一矢もロシュオに届かない。ロシュオの掌から発される圧力に、シグルドは成す術もなく右へ左へ転がされている。
圧力に負けてチェリーのエナジーロックシードが、ゲネシスドライバーが壊れる。それでもシドは止まろうとはしなかった。
「俺は誰の言いなりにもならねえ!! もう二度とナメた口は利かせねえ!! 俺は――人間を、超えるんだぁぁぁぁぁ!!!!」
シドの叫びは、無策だというのに、貴虎が飛び出しそうになるほどの力があって。
『兄さん!』
龍玄が後ろから貴虎を押さえると同時、シドが吹き飛ばされて、割れた岩壁の間に放り込まれた。
『どうして兄さんはそうなんだよ! あの男は兄さんを裏切ったんだろ!? だったらほっとけばいいじゃないか!』
「一度裏切られたからといって……割り切れるか!」
ついに貴虎は弟をふりほどいて駆け出した。
直後、足に小さな痛みが走った。痛みは一瞬にして膨れ上がり、貴虎は転んだ。
「ぐ……光、実?」
『兄さんが、悪いんだからね』
ふり返ると、ブドウ龍砲を撃った姿勢のままの龍玄が。
『僕、こんなに心配しているのに。言うこと聞いてくれないから』
弟を、初めて、恐ろしい、と感じた。
足を撃ち抜かれた痛みで動けない貴虎の前で、ついにロシュオが両手を挙げた。
このままでは、シドが。
『その愚かしさの代償、命で贖うがよい』
「待っ……」
ロシュオが勢いよく両手を交差させると同時、岩壁は轟音を立てて閉じた。
目の前でかつての同志が喪われた。確かに貴虎はシドにも謀られた。だが、なぜかそうでなかった日々のことばかり思い出されて。貴虎は言葉も出なかった。
『少年よ。一応は礼を言おう。その男を止めたことに対して』
『別にあなたたちのためじゃないからね、王サマ』
光実が変身を解き、ロシュオを向いた。
「碧沙の体を守るためだ。妹の体に傷一つでもつけるのは、誰であっても許さない」
光実は踵を返した。
「マガイモノより本物の奥さんのほうがいいでしょ? 僕は本物の王妃サマを復活させる方法を見つけてみせる。そしたら碧沙は返してもらう」
光実は冷たく言い放つと、他の何も目に入らない様子で遺跡を出て行った。
『レデュエ。あの少年を見張れ。我が妻を消そうなどという考えを起こすようなら、お前が処断しろ』
『仰せのままに。王よ』
レデュエの姿が消えた。
「妹だけでなく、弟にまで……!」
『愛する者の安全を最大限に図ることは、貴様らも同じであろう。私も、そうしただけだ』
「ぐ…っ」
反論できない。スカラー兵器使用の直前、貴虎は
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ