オーバーロード編
第16話 一度は信じたから @
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沙を抱えて。
「なっ……貴様、私の妹をどこで拐かした!」
翠のオーバーロードは答えず、玉座に座すロシュオの前に碧沙を下ろして寝かせた。
『ご覧ください、王よ。かつての王妃と全く同じ姿の娘です』
ロシュオは玉座の壇を降り、碧沙の顔にゆるりと触れた。
『レデュエよ。確かにこの娘は、我が妻が“始まりの女”になる前と瓜二つ。だが私とて、見てくれが似ただけの娘に愛を乞うほど耄碌してはおらぬぞ』
『承知しております。ですが王よ。アナタ様は確実に一つだけ、王妃と再び見える術を持っておられる。かつて王妃を代償に得た黄金の果実。あれは王妃の心臓。試してみる価値はあるのでは?』
ロシュオが掌を開くと、そこに黄金に輝くリンゴが現れた。
ロシュオは碧沙を軽く起こし、胸に黄金の果実を落とした。まるでそこに泉があるように、黄金の果実は碧沙の胸に沈んで消えた。
「妹に何をした!」
叫ぶだけで全身が痛んだが、貴虎はロシュオを睨み据えた。
すると、碧沙に変化が起きた。
ふわりと、細い体が浮き上がる。碧沙そのものが苗床になるように、しゅわしゅわ、と蔓が碧沙を覆っていく。
そして、蔓が消えた時、そこにいたのは碧沙ではなかった。
髪は金に、右目だけが赤。あつらえたような白いドレスと銀のストール。
音もなくロシュオの傍らに足を着けた少女は、痛ましいものを見る目でロシュオを見上げた。
「ロシュオ、あなたは何ということを」
違う、と直感した。しゃべっているのは碧沙なのに、韻が、違う。
「死はこの世の絶対の摂理。それを覆そうなど。その上、我々同様に侵略された世界から、知恵の実まで奪ったのですか?」
『奴らは知恵の実を手にするに値しない民だ。力だけに頼り、滅びの道を行く。我らと同じに』
ロシュオは跪き、王妃のドレスを持ち上げ口づけた。
『私はもう一度そなたに逢いたかった。神も摂理も敵に回しても。滅びる前に、せめてもう一度だけ』
「あなた……」
寄り添う白の一対は美しい。だが貴虎には看過できない。その片割れは自分の妹を洗脳したものなのだ。
いい加減にしろ、との台詞が喉まで出かかったところで。
『しつこいぞ! ガキのくせに!』
『そっちこそ諦めたらどう!? オトナのくせに!』
ソニックアローとブドウ龍砲を撃ち合いながら、シグルドと龍玄が遺跡に縺れ込んだ。
「光実!?」
『兄さん!?』
『ハッ。驚きの再会じゃねえか』
龍玄のほうが貴虎に駆け寄った。
『兄さん! よかった、無事だったんだね』
「この体たらくだが、命は拾ったようだ。探しに来てくれた
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