オーバーロード編
第16話 一度は信じたから @
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岩壁に囲まれた道を抜けて、開けた場所に出た。
初瀬がローズアタッカーを停めた。二人はバイクを降り、ロックビークルに戻ったそれを初瀬がキャッチした。
「これが、光実さんの言ってた遺跡、でしょうか」
岩壁は平らで、明らかに人の手が加えられている物だ。崩れたものも、均一の幅に整えられた形跡があった。
「“森”にこんな場所があったなんて……」
「クリスマスのゲームん時は、俺たち、“森”の表面を撫で切りしただけだったってわけか」
巴と初瀬は、岩の形跡を見ながら進んだ。ヒトがいるなら、より崩れていない場所にいるはずだ。崩壊が進んでいない形質の遺物を見つけては、その方向へと進んで行った。
ついに開けた場所に出た。玉座の壇がある、城の謁見の間のような場所。
そこには、巴が望んだ人物がいた。
「碧沙っ!!」
ようやく碧沙のいる場所に出た喜びに、巴は顔を綻ばせた。
不思議なことに、碧沙は白いドレスを着て、玉座の壇に丁寧な所作で腰かけていた。だが、その姿は碧沙そのものだ。この際、目を瞑ろう。巴は走り出し――
「! トモ!」
後ろから追ってきた初瀬に、地面に押し倒された。
「ぅ、ん…亮二さん?」
初瀬が強張った面持ちで見据える先の石壁を見て、巴もその意味を戦慄と共に理解した。
石壁にはクレーターが生じていた。あれをまともに食らっていたらと思うと、ぞっとする。
『我が妃に触れるでない』
玉座のほうを、起き上がりながら見直した。
玉座に座る、おそらくオーバーロードが、掌をこちらに向けていた。碧沙に目が行っていて、白いオーバーロードには全く注意していなかった。
「あなた、は」
「ロシュオ。オーバーロードの王だそうだ」
「貴虎さんっ」
現れた貴虎は、片足を引きずっていた。あちこちが破れたスーツをそれでも着込んで、ひどく疲れの濃い表情をしている。
「知り合いか? トモ」
「碧沙の上の兄さんなんです」
「へえ……」
庇ってくれている初瀬に申し訳なく思いながらも、巴は前に出て貴虎を向いた。
「碧沙に何があったんですか」
巴の一番の懸念は碧沙だ。貴虎のケガも、オーバーロードの王も、今はいい。ただ、碧沙に良くない変化があったようだから、それだけを知りたい。
「今の碧沙は、碧沙ではない」
「――どういう意味です」
「あれはロシュオの妃。とうに死んで、今は碧沙に取り憑いた、オーバーロードの王妃だ」
巴は初瀬と顔を見合わせた。
………
……
…
貴虎がロシュオから知恵の実の話を聞き終えるのを待っていたかのようなタイミングで、翠のオーバーロードが現れた。その両腕に、眠る碧
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