オーバーロード編
第15話 一心同体
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覚えてます」
巴の得意分野は、一度目にあったことを二度目は覚えていることだ。かつてクリスマスゲームでこのラボに招き入れられた時、機材は全て電池か充電式で、わざわざ中から外へ電源を繋ぐ機材は一機もなかった。
「何か特別な物なのかしら……」
もしかしたら碧沙が関わっているかもしれない。
「亮二さん、この線、辿ってみましょう」
「言うと思った」
初瀬は笑って賛成してくれた。巴はほっとした。強気に出ても、初瀬が反対したらと想像すると、碧沙が同じことをするのと同じくらいに怖い。
その心理の根を、巴自身はとうに突き止めていた。突き止めて、あえて触れずに来た。
巴は思考を切り替え、ラボの外へ続くケーブルを見据えた。
巴と初瀬は、往路と同じく、地味に堅実に時間をかけて、ケーブルを辿って行った。
着いたのは、薄暗いホールだった。面積だけならラボと同じくらい。薄暗いのは、照明が床近くの壁にしかないからだ。
ホールにはぎっしりとベッドが並べられ、一つ一つのベッドに人が横たわっていた。全員が一様にマスクらしき物を着けられ、ヘルヘイムの蔓が点滴のチューブのように、ホール中央の機械に繋がれている。
追ってきたケーブルは、その中央の装置に繋がっていた。
「何だよこれ……」
初瀬の呆然とした呟きがホールに反響した。
手近な一人のマスクを外そうと、巴はマスクに手をかけた。だが、外れない。初瀬がやっても同じだった。
「ろくでもないことをされてるのは確かですね。こっちがダメなら」
巴は装置の前に行き、量産型ドライバーを構えた。
「待った! 精密機械だったら、下手に壊すと止まらなくなるかもしれねえ。やめといたほうがいい」
「っ、そう、ですか」
巴はドライバーを下ろした。
「誰だ!?」
ホールのドアから光が雪崩れ込み、闇に目が慣れていた巴はとっさに目元を手で庇った。
ドアが閉まることで人物のシルエットが見えた。
「光実さん」
スーツ姿の光実がホールに入ってきた。まだ高校生のはずなのに、彼は大人が着るようなダークスーツを着ていた。その格好がひどい違和感を巴に覚えさせた。
「お前、ここの人たちに何して……!」
「碧沙は!?」
初瀬が言い切るより早く、巴は一番知りたかったことを最短の単語で光実に問うた。これには光実も驚いたのか、目を白黒させている。
「トモ、お前なあっ」
「だって……」
「碧沙ならヘルヘイムの森にいるよ。“森”の一番深いとこに遺跡がある。そこの城跡」
「ヘルヘイムですね。分かりました」
巴はつかつかとホールのドアに歩いて行き、部屋を出ようとした。ラボからここへ来たのはとんだタイムロス
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