第二部 vs.にんげん!
第25話 あんさつのかげ!
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……軽い感触なんだよ……カシャッていうか、クシャッていうか、そんな感じ――」
「何を言いたいの……?」
「人間、死んだらただの死体で、たくさん死んだら死体の山で、もう人格とか、生きてた意味とかもなくて」
ウェルドは自己嫌悪に頭を抱えた。
「あんたもそう思うだろ?」
「……思わない」
シャルンは激しく頭をふり、叫ぶ。
「あたしは思わない!」
大きな音で戸を閉めて、シャルンは飛び出していく。ウェルドは頭を抱え続けた。
気が済んでから、顔を上げ、大儀そうに立ち上がった。衝立をずらす。
ベッドの上のディアスと目が合った。嫌な気分を堪えて、枕もとのスツールに座る。
「起きてたのかよ」
ティアラの治癒魔法が効いているのか、どこかを病んでいる様には見えなかった。ひどく顔色が悪い以外は。
「賑やかだな」
細い、掠れた声で言った。
「何かあるのか」
「開門日だ。わかるか? 俺達がここに来て半年経ったんだよ」
何気なく答えたが、ディアスの反応は激しかった。細く開いていた目をかっと見開き、その体にたちまち生気と殺気が漲り、ウェルドは身構えた。彼は起き上がろうとした。しかし、やはり体力が落ちているので、上体を少しもたげたところで力が抜け、後頭部を枕に打ちつける。それでもまだ起きようとした。
「どうしたんだよ?」
「寝ている場合では――」
「いやお前起きてる場合じゃねえから。そんな事も判断つかんお前じゃねえだろう」
「今日までに」
ディアスは起きようとするのをやめたが、代わりにほぼ睨みつけるような目でウェルドを見つめた。
「今日までに、外界で何が起きたか教えろ」
「はっ?」
「早く」
ウェルドは眉を顰める。
「外界で……一番大きな出来事だと……魔物が何回か、大量発生している」
「回数は」
ディアスは、予想したような動揺は見せなかった。
「四回」
それを聞いて、ふと、目から強い光が消える。体から力が抜け、酷く消耗した様子になるのが見て取れた。
「何で……そんな事聞くんだよ」
ディアスは答えなかった。
驚くべき事に、彼は少し、ニタリと笑った。ウェルドはディアスが笑みを浮かべるところを初めて見た。ただそれは、酷く皮肉で、嫌な、暗い笑いだった。そして、真顔に戻った。
「……笑えない冗談だ……」
目を閉じる。気絶するように眠りに落ち、寝息を立てはじめた。ウェルドだけが残された。
「おい、何なんだよ?」
間もなく部屋の戸を軋ませて、ティアラが入ってきた。彼女は一時期ほどの酷い疲労状況ではない様子だった。ディアスの状態がよくなったのと……凶戦士に斬りつけられた患者たちが、日に日に数を減らしているからだ。
ティアラは一礼し、微笑んだ。
「いらしていたんですね、有難うございます」
「おう
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