第二部 vs.にんげん!
第25話 あんさつのかげ!
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かった。
「ディアス」
呼ぶと、何故か引け目と気まずさを感じた。
「おい」
返事はない。
「……んだよ、寝てんのかよ――」
カーテンを開けた。
何千という眼が、曇りガラスの向こうからウェルドを見上げた。
ぎっしりと、窓の下の通りを埋めて数えきれぬ人間が立っていた。
痩せこけた、土気色の顔の、冬だというのに薄いボロ着の男と女と老人と子供と若者と中年。
血を流し、所どころ魔物に食いちぎられた体で――
「ウェルド?」
不意に間近で呼ばれ、ウェルドは声をあげ窓から飛びのいた。呼びかけたのはシャルンだった。ウェルドの反応に彼女もビクリと身を竦ませる。ウェルドは何度も、窓とシャルンを見比べた。恐る恐る覗いた窓の向こう、人々の幻覚は消えていた。
「な、何よ。びっくりするじゃない」
「……いや、すまん」
ウェルドは頭を掻き、空いているベッドに腰を掛けた。
「見舞いか?」
「ティアラのお手伝いに来てたの。いつもはルカかサラが来てたけど、今二人とも遺跡だし。そしたらウェルドが入って来て、二階に上がるの見えたから。ウェルドこそお見舞い?」
「まあ、ティアラに呼ばれて」
シャルンが窓辺に寄る。また雪が降り始めた。ウェルドを振り向いた時、シャルンは微笑んでいる。
「あたしね、ウェルドが柱を壊す気ないってジェシカから聞いた時、悲しかったんだ。こんな時に味方になってあげるのが仲間ってもんじゃないの、って」
「……」
「でもウェルドは――」
「何万人死んだんだろうな」
ウェルドは居たたまれなくなって、シャルンを遮る。
「外界でさ」
シャルンの微笑みが消えた。
「……後悔、してるの?」
「わからない」
そしてまた、辛うじて何かを取り繕うような笑みを浮かべる。
「そんなのおかしいよ」
「おかしいんだろうな。でもわかんねんだよ、自分がどう思ってるのか。柱壊した後――直後とか数日とか――すげえ怖くて――すげえ数の人間、俺、殺しちゃったんだって」
「でも、それは――」
「でもさ、どうでもいいんだよな。どうせ俺の目の前で起きた事じゃねえし」
ウェルドは自分の言葉に驚いた。シャルンの顔が引き攣る。
へえ、これが、俺の本心ってものなのか。
俺の考えなんてのは所詮、この程度のものなんだよな。
全くだ。常に考えが行動に勝るなら、俺は柱を壊さなかったのに。
「一人殺すのも一万人殺すのも同じ事なんだよ」
「何を言っているの!?」
「どうせ他人事なんだよ。死ぬ奴はどうしたって勝手に死ぬんだよ! 弱い奴が悪いんだよ!」
「ウェルド、やめて!」
「お前、人殺した事ある?」
憔悴した目に狂乱の光を宿し、ウェルドはシャルンの怯えを見る。
「卵みたいなんだ」
「な、何が?」
「大剣で、人の頭を潰す時
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