第四章
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第四章
「フランス人は文句を言って」
「フランス人は何処でもだね」
「イギリスのことが嫌いなのにいつも来るのよ」
これがフランス人だったりする。イギリス人もフランスによく来る。そうしていつもお互いのことを悪く言い合うのである。そんな両国だ。
「たまったものじゃないわ」
「それはまた災難だね」
「最悪よ。それでだけれど」
「うん、それで?」
「そのシチリア料理を注文したいわ」
そうだというのであった。
「何がいいかしら」
「じゃあまずはね」
「ええ」
「ハムとサラミにチーズにサラダに」
最初はそれであった。
「あとフェットチーネだね」
「あの幅の広いパスタね」
「イカ墨がいいかな」
「イカ墨?」
「ああ、まあこれは見てのお楽しみだよ」
エリーがそれについて知らないのを見ての言葉だった。マスターはここでさらに話すのだった。
「それで魚は」
「今度は何かしら」
「鰯がいいな」
今度はそれだというのだった。
「ガーリックとオリーブで炒めたものだね」
「それなのね」
「それと羊のステーキ。ラムがいいな」
メインディッシュまで決まってしまった。
「ケーキは店のお任せだ。ワインは」
「あっ、ワインはいいわ」
そちらは止めたエリーだった。
「二日酔いが酷かったから。やっとましになってきたけれど」
「おや、ワインはもういいのかい」
「折角だけれどね」
苦笑いと共の言葉だった。
「今は止めておくわ」
「そうなのかい。それは残念だな」
「また今度ね」
「じゃあ夜にでも」
マスターは笑ってこう言ってきた。
「飲もうか」
「気が早いわね。もう夜の話なの」
「ははは、気が早いのはシチリア人の長所だよ」
「それが長所なの?」
「そうだよ。早いうちにあれこれ動けるからね」
だからだというのである。
「だからね」
「そういうものかしら」
「そうだよ。それじゃあね」
「ええ」
「食べようか」
笑顔でエリーに言ってきた。
「そうしようか」
「ええ、それじゃあね」
エリーも笑顔で頷いた。そうしてだった。
二人でその料理を食べはじめた。エリーが驚いたのはそのパスタだった。
何とだ。真っ黒だったのだ。まるでインクでもかけたかの様にだ。
それに目を丸くさせてだ。マスターに問うた。
「あの、これって」
「だからイカの墨をかけたんだ」
「イカの!?」
「そう、イカのね」
そうだというのである。
「それがこれなんだ」
「イカって食べられるの」
思わずこう言ってしまったエリーだった。
「それも墨なんて」
「イギリスじゃイカなんて食べないんだ」
「全然。海のものっていったら」
「海といえば?」
「鮭と鱈しか食べないわ」
そうだ
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