序曲〜overture〜
〜プロローグ〜
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服一式、夏用冬用それぞれ三着ずつだった。
「あの……、母さん?間違えてはいませんか?」
「何を言っているの?千早ちゃんはせっかくの美人さんなんだから、お洒落しなきゃいけないわよ。」
「千早様、よくお似合いでございます。そちらの服は肌の露出を押さえるために学園側に無理を言って作っていただいた物なのです。」
史、褒めているのか取り繕っているのか分からないことを言わないでくれないかな。
「母さん、何か間違っていませんか?」
先ほど問いかけた疑念を再び問いかける。すると母さんは心底不思議そうに首を傾げながらようやく答えてくれた。
「あら、千早ちゃんにはちゃんと女の子として、文月学園では過ごして貰うって言わなかったかしら。」
一瞬にして部屋の中の気温が氷点下まで下がったように感じた。
「えっ?私なにか駄目なことを言ってしまったかしら。」
「いえ、奥様。何もございません。千早様は新しい環境に適応できるか御懸念を召されているだけで、何一つ奥様に落ち度はございません。」
「そ、そ、そうですよ、母さん。心配でして、あは、あはは……」
「今からそんなことでは心配ですよ、千早ちゃんにはお父さんの後を引き継いで立派な外交官になって貰わないといけないんですからね。たかだか学校なのです、立派に友達づきあいをしなさい。いいわね。」
「分かりました。」
「じゃあ、私たちはそろそろ帰ります。」
そういって手荷物の整理をし直し始めた母さんにばれないよう、史は僕のところにやってきた。
「史、どういうこと。」
「千早様、残念ながら奥様のお言葉は嘘ではありません。既に申し上げましたがそちらの制服は千早様の物です。今学年より試験的に販売されるロングスカート型の制服ですが、実質的には御門家から提案され、千早様の為に作られた制服です。」
「そんな、バカなことがあってもいいのか……」
「千早様の心中、お察し申し上げます。しかし今回の奥様のご様子から拝察しまして、通い通せなければ勘当は確実のものと思われます。」
「史、帰りますよ?」
「はい、奥様。千早様、申し訳ありません。」
玄関まで出ていって、二人を送り出した後の部屋の中は何もかもが静かで。
ようやく自分の状況がとんでもない状態になっていると認識した僕に出来たのは、ただ自分の行いをしばらくの間悔やみ、絶対に学園の人間にばれてはいけないと、昔教えられた女性らしい仕草を研究することだけだった。
こうして、二年から僕は(女装して)文月学園に転入することに成ってしまったのだ。
無情にも女装での学校生活は刻一刻と迫りつつあった。
ご主人様の悩み、侍女の悩み1
私は御門家に仕えている侍女の一人で、今は千早様付きを仰せつかっております、渡會史と申します。
侍女として、千早様のお望
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