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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴?その2ー2
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、食べ物は食べ物の扱いをしやがれ!」
「あはは、ウソウソ♪」

からかわれたのに気付いたであろうさざめは、何所か気恥ずかしそうにぽりぽり後ろ頭を掻く。「それならいい」、という言葉にさざめらしさを感じた。さざめらしい――素直じゃない所。さざめもさざめなりに、これを手渡すことに思う所があったみたいだ。それが証拠に、小さく安堵のこもった息を吐いていた。そういう所は以外にも態度に表れやすくて、学校での階段落下事件からはそれがもっと分かりやすくなった。

心の距離が狭まっているのだろうか。
もし原因がいりこの事を考えて悩んでいたとしたら、それもやっぱり嬉しくて。
強がってるのに気遣ってくれているぶきっちょなところがおかしくて。
タイミングを見計らったように戻ってきて、予想よりも嬉しい事をしてくれる優しさがこそばゆくて。

緩む頬を隠しもせず、懐とは反対にぽかぽかに温まったその心のぬくもりを共有したくて、さざめの肩に、自分の肩を寄せた。

「おい、人にもたれかかるなよ」
「だってちょっと疲れちゃったんだもん。人を置いてった罰だと思ってガマンしてよね?」
「………ふん」

故郷に帰ればもう二度とできないかもしれないから、その触れ合いをもう少しだけ――





……なお、後ろにはいまだに多くのギャラリーが留まっていたことに、2人は暫くの間気付かなかった。
早くゲームさせてほしいのに2人の邪魔をしづらい空気が発生している所為で困っているプレイヤーもいれば、いりこに連れの男がいたことで露骨に舌打ちする人間もちらほら。2人の惚気ているとしか思えない会話と触れあった肩の甘い空気に中てられた独り身たちは、やっていられないと渋い顔で早々に帰ってしまった。


なお、2つあったクッションのうち一つはいりこからさざめに再プレゼントされた。
さざめはその理由がイマイチ理解できていなかったが、家に帰りついてからそのクマクッションがいりこのものと「おそろい」であることに気付いて「嵌められた!」と顔を真っ赤にしていたという。

そのクッションは、未だに捨てられることなく2人の部屋に横たわっている。
 
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