俺馴?その2ー2
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さざめくんが!?」
「そう間違ってるとは思わねえが面と向かって言われると腹立つな。ほっぺ抓りの刑に処してやろうか?」
何でもないように押し付けるさざめだが、それでも自分のお金を使って取ったものを人に全部渡す物だろうか?しかもこの男はゲームに生産性を求めていた人間である。言うまでもないが、得た景品を全て他人に譲渡してしまえがそこに生産性があるなどとは言えない。そのことを分かっている筈なのに、無償で物を人に渡す。これではまるで、いりこのために取ってきたようなものではないか。
「本当に、私にこれ……?いいの?」
「取ったはいいけどクッションはいらないし、お菓子も俺の好みじゃない。だからお前が持って行け。勘違いすんなよ?俺が持ってても似合わねえからお前に押し付けるだけだ」
それだけ言って、さざめはあさっての方向へぷいっと顔を逸らした。
袋の中には可愛らしいクッションやお菓子が詰まっているが、いりこは具体的な物品はどうでもよかった。ただ、さざめがいりこにプレゼントを贈るなど、出会ってから数か月、一度も起きなかった事象である。仮にも人の事を胡散臭がっているさざめが、いりこに対してプレゼントを贈ったというのはそれだけでも異常事態であり――胸の奥、心音がとくんと音を立てた。
まるでさざめがいりこの事を気遣ったかのようで。まるで自分がこの時に落ち込むことを見透かしていたようで。まるで――自分に為にこれを取ってきてくれたようで。
(プレゼント、貰っちゃった)
そんなものを貰うのは初めての経験で――
物資が不足している向こうの世界でも、来たばかりのこちらの世界でも初めてで――
(クッションにお菓子、貰っちゃった)
さざめが自分の得たものを手渡してくれた事実が頬を火照らせ――
例え本人にそんな気が無かったとしても、その初めてをさざめがくれたことがどうしようもなく――
(さざめくんから、手渡しで貰っちゃった)
ただただ純粋に、なんとなく。
そんなさざめと一緒に過ごせる今が嬉しくなった。
「何だ?クッション嫌いか?」
不意に、すこし不安そうな顔でこちらの顔色を伺っているさざめの言葉にはっと意識を戻したいりこは、その喜びを隠そうともせずに笑顔を見せた。喜びの感情が抑えられずに顔にそのまま出てしまったような、含みの無い無邪気な微笑み。
「ううん、大好きだよさざめくん」
クッションが、なのか。それともくれた本人を、なのか。
一瞬こちらを見入るように停止したさざめは、やがて気が抜けたように小さく息を吐いた。
「はぁ……ま、それならいいんだがな。有り難く受け取れ」
「うん、さざめくんのデレ記念に永久保存して一生大事にするね?」
「そこまで有り難がらないでいいわ!クッションはクッション
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