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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴?その2ー2
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い詰められたことに落胆や同情の声が上がっている。それほどにこの義経は強敵だった。膨大な弾幕、機敏かつ不規則に見える挙動。そして何より驚くべき耐久力。一体何発当てれば沈むのかを今すぐ会社に聞きたくなるほどの耐久力はプレイヤーの手に疲労を増大させていき、やがて完全に追い詰められる。
シンプルで強大。故に正攻法で挑むしかなく、それが最も厄介。立ちはだかる最大の強敵によって、確実に追い詰められる。

だが――

ゲーム製作者の用意した思考ルーチン相手に、不敵な笑みで対抗する。追い詰められれば追いつめられるほどに燃えてくる男の子のような逆境突破精神を、いりこは胸に秘めていた。そして――ついさっき、対義経戦法が彼女の中で確立された。――解析は終了した。後は定められた手順に則り、倒すだけだ。

(追い詰めたと思いました?いいえ、追い詰められたのはあなたですよ!)

数分後、周囲のギャラリーが興奮の歓声を上げる。
最後の1機になった途端に超好戦的に前へと自機を進めたいりこに周囲は誰もが自棄になったと思った。だが実際はどうだ。ゼロ距離に近い距離で、しかも射程距離が短くて使いにくパワーアップアイテム『ドスコイバスター』を使用した状態でのプレイで、何分経っても撃墜されない。それどころか最も厄介な点である不規則な動きに完全に対応した状態で近距離からどんどん責め立てる。

「ふっふっふっ……その弾幕、実は近ければ近いほど隙間が大きいね。後は一定時間おきに動くその動きの機動と、それぞれの初動モーションさえ覚えておけば……ざっとこんなもんよぉ!!」

いつ当たるか分からないほどの近距離での接戦。しかもダメージを確実に与え、敵の動きを確実に躱すコンピュータ染みた動き。最初はあきらめムードだった周囲も段々とその動きに魅入られ、気が付けばギャラリーはまるで自分の事のようにいりこへ声援を送り出していた。
例え赤の他人であろうとも、ここにいる全員は仲間なのだという確信に満ちた声援がたった一人の人間へと注ぎこまれる。

「やっちまえ姉ちゃん!!」
「いけいけ!あとちょっとだ!!」
「俺の仇取ってくれー!!」
「やべーこの人TASさんだよ……完全にTASさんだよ……」

ちなみにTASとは「Tool-Assisted Speedrun(又は Superplay)」の頭文字を取ったものであり、特定の人物を指すわけではない。ゲームのエミュレータに実際のプレイでは不可能に近いが理論上可能な動きをさせて遊ぶものなのだが、いりこのやっていることは最早それに近かった。
やがて、義経の動きが止まり、鎧が砕けていく。その人間らしからぬ巨体を震わせ、手に持った刀を取り落し、は驚愕と屈辱に染め上げられたその表情には鬼気迫るものさえ感じる。今、自分たちは確かに義経という怪と相対
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