暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第16話 査閲と
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
彼を査閲部に配属するよう辞令を交付いたしました」
 文句があるならアンタのライバルであるシトレに言え、というフィッシャー中佐の返答に、ロボスの顔は誰にでも分かるような不快の表情が浮かんだ。
「小官も彼の上官として、彼の任務に対する真摯で献身的な行動には、充分評価に値するものと考えます」
「彼の士官学校の席次は?」
「首席であります」
 中佐の返答に、ロボスの顔はさらにゆがんだ。もしかしてこいつ学歴コンプレックスか? さすがにロボスも首席と返答されては成績から俺を批判することは出来ないらしい。いや、こうなると卒業間近に追い込み学習した苦労の甲斐はあった。マジで苦労したが。

「……参謀長より、少尉からの提案があったことを聞いた。本来なら少尉からの提案などいちいち勘案する話ではないが、一応聞かせてもらおう。どうして一点集中砲火を演習科目に入れる必要があるのかね?」
 苦々しい、本当に苦々しいというのはこういう表情の事かと俺はロボスの顔を見て思った。だがロボスと俺との間には八つの階級があり、いかなる形とはいえ上官には違いないので、感情を出すことなく俺はフィッシャー中佐に話した内容をそのままロボスに伝えた。言い終わった後もしばらくロボスは腕を組んだまま目を閉じていたが、次に目を開いた時にはグリーンヒルに演習第四段階の計画表と投影機を持ってこさせていた。

「貴官の言いたいことは分かった。が一点集中砲火が戦術的に有効かどうかは不確かだ」
 明後日からの演習予定図を元に、俺が投影機を使って説明した後で、ロボスは鼻息荒く応えた。
「集中砲火が効果的であることは疑ってはおらん。それを一点に集中する理由が乏しい。個艦単位での近接戦闘、相互連携においては有効だろうが艦隊・分艦隊規模では逆に効果が薄くなる」
 司令官席に座りながらも三次元投影機を指さし説明する精悍なロボス、というあまりにも原作イメージとは異なる言葉の切れ味に、俺は正直この時驚いた。そして一体この後どんな出来事があって、ああも無惨に晩節を汚すことになったのか、人ごとならず興味が浮かぶ。
「特に艦隊単位での一点集中砲火は威力も大きかろう。その代わり一度目標を外せば、一斉射分のエネルギーと時間を敵に与えることになる。何しろ戦闘宙域は広大だ。一万隻分の砲火が一点に集中したところで、撃破できる艦艇数はたかがしれている」
「ですが……」
「貴官の意見を全て否定しようとは思わんよ。巡航艦三隻で敵戦艦一隻を血祭りに上げられるのであれば、有効的なのは考えてみれば当たり前の話なのだからな。だが残念ながら貴官には艦隊戦闘の経験がない。そして第三艦隊はナンバーフリートであって、数隻単位の辺境の警備部隊ではない。艦隊戦闘に必要とされる火力は『点』ではなく『面』なのだ」
「……」
「シトレ中将が期待するだ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ