第16話 査閲と
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打ち破る事が出来る。低威力の巡航艦主砲でも、三隻以上集まれば戦艦のエネルギー中和磁場も撃ち抜ける。基本的に中性子ビームや光子砲のベクトルは実体弾のように反発するのではなく、合成される。だからこそ金髪の孺子は戦艦エピメテウス以下第一一艦隊の旗艦中心部を崩壊できたし、ヤン=ウェンリーは過度に保護された要塞の航行エンジンを撃破することができた。
俺が翌日その事をフィッシャー中佐に告げると、中佐は口ひげに手を当てしばらく考えてから応えた。
「集中砲火戦術に関する訓練も当然計画している。しかし、それだけでは貴官は不足だと?」
「確かに計画されていますが、全艦隊、あるいは分艦隊全艦による一点集中砲撃訓練と、同時併行しての陣形変更訓練は計画されていません」
「それはそうだが……貴官の求めているのは実戦演習というよりも、むしろ式典で行われるような砲撃ショーのようなものではないか?」
「どんな堅艦も複数艦からの集中砲火には耐えられません。それと同じように、艦隊規模での一点集中砲火が可能であれば、敵艦隊を細いながらも分断することが可能なのではないでしょうか?」
「……グリーンヒル参謀長と検討してみよう。今から演習項目を変更するとなるとかなり大がかりな事になる」
参謀長の名前が中佐の口から出て来たところで、俺は一瞬この提案を引っ込めようと思った。結果的に採用されればロボス−グリーンヒル両巨頭率いる第三艦隊の攻撃力を向上させることになりかねない。いや、向上させることは悪いことではないし、第三艦隊の精強化が進むのは同盟にとって悪いことではない。
だが、根本的に俺はロボスもグリーンヒルも嫌いだ。ロボスと対立するくそ親父ももちろん嫌いだが、こちらの世界の実父の件や、俺に対する捻くれた温情もあることから、グリーンヒルに比べればはるかにマシだ。ぶっちゃけ俺は『シトレ派』と言っても過言ではない……多分に認めたくはないが。
そして案の定、俺は演習第三段階最終日の夜、フィッシャー中佐と共に、グリーンヒルに呼び出された。
行き先は戦艦アイアースの司令官公室。当然待っているのは、グリーンヒルだけではない。
「君がボロディン少尉か」
グリーンヒルを左隣に立たせ、司令官専用の席に座っているのは、小柄ではあったが顔には精気があふれ、眠たそうだが鋭い眼差しと太い眉を持つ……若いラザール=ロボス中将だった。
「士官学校を卒業したばかりと参謀長から聞いた。何故君が査閲官をしているのかね?」
「それは閣下……」
俺が口を開こうとすると、フィッシャー中佐が俺の膝前に手を出して制する仕草をすると、代わりに一歩踏み出してロボスに応えた。
「ボロディン少尉には確かに実戦経験はありません。ですが彼の士官学校における成績と、士官学校校長の強い推薦を鑑み、人事部は
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