第16話 査閲と
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
くなる」
「父と叔父は、ジャム口に含んでから紅茶を飲みますが?」
「どうやらボロディン家のお茶会は私にとって鬼門のようだ」
そう言ってお互い苦笑した後、中佐は俺に向かってやや真剣な目で言った。
「意見がある時には遠慮する必要はない。君は新任の少尉であることは会議室にいる誰もが知っているし、みな百戦錬磨の紳士だ。間違うことで学ぶことも多いはずだ」
「ありがとうございます。ですが……そうすると会議時間が長くなってしまうのでは?」
「切り上げるタイミングは私が心得ているよ。それよりも君は会議中、ずっと何かを言いたげだった。それが私には気になるんだが……」
「小官自身でも、それが分からないのです。言いたいことはあるのですが……言葉に出来ず」
「そうか……それなら仕方がない。分かったらいつでも発言してくれ」
そこまで言われると、俺も考えなくてはいけない。翌日から再び演習は始まった。演習第二段階は戦隊単位での演習だ。今までの小戦隊とは隻数も異なるだけでなく、上級指揮官が複数の小戦隊を指揮する。故に査閲対象の階級も上昇するので、下手な評価を下せば容赦なくチームの会議室に怒鳴り込んでくることもある。
幸いにして我らがフィッシャー中佐のチームには来なかったものの、もう一人の中佐の処には幕僚を連れた指揮官が評価に対する説明を求めて訪れたらしい。その際グリーンヒル少将が間に入って仲裁したという話を聞き、違和感の原因がはっきりしなかったこともあって、俺は暗澹たる気分になった。
再び休みを一日おいて演習第三段階。今度は複数の戦隊が集まって編成される分艦隊規模の演習が始まる。
それまで評価対象が小さく細かかったものが一気に大きくなり、標的も空間規模になる。それに伴い標的の撃破ではなく、宙域への投射射線量で評価が決まる。これまで艦隊といえば練習艦隊規模しか経験のない俺としては、二〇〇〇隻の艦艇が指揮官の命令によって移動・砲撃する有様に、素直に感動していた。おそらくユリアンも初めて艦橋に立った時、同じ思いをしたに違いない。演習図面も個艦単位ではなく勢力範囲表示になる。
「あ」
演習第三段階の一日目の夜、俺は思い出したようにベッドから飛び起きた。演習の華麗さに俺は子供のように魅入っていたが、今更ながら肝心なことに気がついた。何故複数艦による単一目標に対する集中砲火などの意図した集中砲火訓練を行っていないのか? それは各艦艦長同士のチームプレーであって演習する必要がないということなのだろうか……単純に艦対艦の火力では、巡航艦は戦艦に勝てない。それが戦隊規模、分艦隊規模、艦隊規模となればその火力の差は著しくなる。
だが集中砲火となれば話は変わってくる。実体弾でも同様だが、低威力の火力でも同じところに何度も当てていればいずれ装甲を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ