群雄割拠の章
第五話 「わたしは彼と、添い遂げる」
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新たな夢に歩き出そうとしていたはずなのに。
「そうよ。孫呉の復活は成った。母様の夢は果たした。だから……わたしはわたしの夢を追うことにしたわ」
「お姉様の……夢?」
私の言葉に。
お姉様は悲しげな目で……けど、決意を秘めた目で、頷いた。
「好きな男を……何にも変えられない人を、生涯かけて追うわ」
「…………それは、天の御遣いか」
「冥琳……」
一緒にいた冥琳の、低く籠もった声が聞こえた。
こんな冥琳の声を、私は初めて聞いた。
「……ええ、そうよ」
「っ!」
冥琳の手が動き、お姉様の胸倉を掴み上げる。
そのまま自らの顔の傍へと引き寄せた。
「私達の夢は! 家族が笑って暮らせる国は! 私達二人でこれから作る夢を捨てろというのか!」
「……………………」
冥琳の激昂する姿など、本当に始めてみた。
ここにはいない祭がいれば、もしかしたら見たことがあるのかもしれないけど……
「冥琳。それは孫呉の復活で……成ったわ」
「まだだ! まだ笑って暮らせる国など程遠い! そもそもあの男に与えられた国だぞ!? 勝ち取ったわけじゃない! それを自分たちのものにするには、これから作ることが大事ではないのか!?」
「それでも……それでも、孫呉は復活したわ。そして、統治者としての器なら……わたしより、蓮華のほうが優れている」
……私が、お姉様より優れている?
「そんな……そんなことありません! お姉様に比べたら、私なんて孺子にも劣ります!」
「……自分を過小評価しないで、蓮華。貴女の器はわたしも冥琳も、そして母様さえも認めていたところよ」
「そんな……」
私なんて……そんな器など、ない。
「……蓮華様の事は確かにそうだ。孫呉の明日を担う方だと誰もが思っている。だが! 今お前が隠居し、孫呉を去ることに何の意味がある!」
「わたしの為よ」
「………………っ!」
バンッ、と音がする。
あの冥琳が……お姉様を、平手で打った……?
「それで……全てを捨てるのか。私を……孫呉を……捨てるというのか!」
「…………ええ。わたしは、盾二のために、自分の全てを捨てるわ」
「っ!」
再度、お姉様の頬が叩かれる。
その唇から、一筋の血が流れた。
「私は! 私はお前に全てを……自分の全てを託して……今まで何のために働いてきたと思っているのだ!」
冥琳の頬に、涙が流れる。
歪む冥琳の顔は、初めて見る悔し涙だった。
「…………………………」
お姉様は何も言わない。
ただ冥琳を見据え、その瞳から目を逸らさず、ただなすがままに立ち尽くしている。
「これから……これからだろう……私と、お前と、蓮華様たちで……
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