暁 〜小説投稿サイト〜
悪人の顔
わたくしごと

[1]後書き
2163年夏の日──わたしはいま、6畳ほどのリビングで己のからだを無防備にさらけ出している。
勉学とアルバイト……わたしの労働による疲れを、若しくは鬱憤をベットにぶつけているのである。

この土地に来たのはちょうど1年前のことだ。大学に入学したのと同時に、わたしはここで一人暮らしを始めた。はじめ数日は空気がおいしいだのと嘯いていたが、なんのことはない。わたしはその数日間だけ観光気分に浸れたというだけだ。よくよく見れば、自然豊かと言う割には山々の大部分は開拓されており、かといって都会かと聞かれれば間違いなくそんなことはない──ようするに何に関しても半端な土地なのだ、ここは。

まぁ、だがしかしそれでも1年だ。今更そのことに何を思うでもない。住めば都とはよく言ったもので、今では、それなりに快適である。

唐突に物思いに耽り、現状の再確認をしてみたが、時刻はもう19時をまわっている……少し時間をくいすぎただろうか?夕食の準備も考えると、こうしていられるのもあと30分が限界だろう。

「さて」

わたしはそう息をつくと起き上がり、1m程先にあるソファーに向かう。立ち上がって見渡した我が家はおもいのほか綺麗で、まるで誰も住んでないような、そんな寂しさをおぼえる──。ともかく、わたしはソファーに座り込み、リモコンをとってテレビをつけた。
テレビをつけたことに、特に理由があったわけではない、惰性である。だが時に習慣というものは人間に思いもよらないものを授けてくれるらしい。

「悪とは何をもって悪とされるのか……正義とは何をもって正義とされるのか……今!明かされる大悪党のその素顔!!その悪名を後世までも轟かせる彼らの本当の姿を今夜、あなたは知ることになる」

最も、その時のわたしはと言えば暇潰しどころか、ディスプレイに映る近年では稀な程チープなOPの文句に腹を抱えて笑っていたわけだが。



「では、みせましょう……“悪人の顔”を」
[1]後書き


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