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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第五話 世界ガ悪魔ニ壊サレル前ニ
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つめる。その顔に先程まで浮かんでいた微笑みは―――なかった。

「確かに、わたくしは焦っているのかもしれません」
「……それは―――」
「―――理由は二つあります」
 
 問いを遮り、ヴィットーリオは立てた二つの指を士郎に突きつける。

「そして、その二つとも今のあなたがたにお話しすることはできません」
「―――え」
「な」
「それは」
「……」

 士郎に突きつけていた手をテーブルに当て、立ち上がったヴィットーリオは、後ろ手に組んで大晩餐室の中を歩き始めた。コツリコツリと靴音が響くのに、ヴィットーリオの言葉が混じる。

「話せない事情は数多くありますが……そうですね。話せない理由ですが、一つ目の理由については、もしその『話せない理由』が漏れてしまえば、国の境なくハルケギニアの全てが混乱の坩堝となる恐れが強いためです。ですから、ある程度対策の見通しがつかない限りは、あなたがたにお話することは難しいでしょう」
「ハルケギニア全てが―――」
「―――混乱?」
 
 ルイズたちが困惑と恐れが混じりあった奇妙な声で疑問を口にする。が、それに対する応えはヴィットーリオからなかった。大晩餐室を歩き回っていたヴィットーリオが足を止めると、振り返って士郎を見る。その視線の中には、探るような意思が感じられた。

「―――二つ目の理由について教える事ができないのは」

 じっと士郎を見つめるヴィットーリオ。士郎のどんな些細な反応も見逃さないといった様子だ。ヴィットーリオの傍に控えるジュリオもまた、士郎に観察するような視線を向けていた。

「―――わからないからです」
「「「「は?」」」」

 ヴィットーリオが口にした言葉を聞いて、緊張に表情を固めていたルイズたちが奇妙な間の抜けた声を上げ。士郎も同じように、真剣な表情を浮かべたまま、ガクリと微かに身体を傾げさせた。

「……その、聖下。それは一体どう言うことでしょうか?」
「そのままの意味ですよミス・ヴァリエール。わたくしが虚無を使ってまで“聖地”を取り戻そうとする理由の二つ目は―――『わかない』なのです」
「わからないって……」

 混乱したのか疲れたのか、頭を抑えながらルイズがテーブルの上に突っ伏してしまう。それを横目にしながら、士郎はその言葉の真意を問いかけた。

「何が『わからない』と」
「……全てです。実はですね。二つ目の理由に関係するモノと言うのが、遥か太古のものなんです。数千年も前の資料であり、また、その内容の余りの荒唐無稽さに、わたくしたちの中でもただの物語か何かではないかとの意見が多数を占めている程です。ですが、もし、これが真実であるならば、このままでは……」

 じっと士郎を見つめるヴィットーリオの瞳に、一瞬だけだが恐れのようなも
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