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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第五話 世界ガ悪魔ニ壊サレル前ニ
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れるように、アンリエッタは静かに口を開いた。

「わたくしは未だ未熟の限りです。国を収める王としては半人前も良いところでしょう。何が正しく、何が間違っているかの判断すら出来ない愚か者です」

 『ですから』と続けながら、アンリエッタは顔を上げ士郎を見る。様々な感情に満ちた、しかし強い視線。士郎を見つめながら、アンリエッタは言葉を続ける。

「―――シロウさん。あなたに全てを託します。この“聖戦”に賛成するも反対するも、わたくし―――アンリエッタ・ド・トリステインは、あなたの決定に従います。その結果生じたあらゆる事柄に対する責任は全てわたくしが請負います」
「ちょ―――姫さまっ!?」
「殿下っ?!」

 驚愕、非難、動揺―――様々な感情が込められた呼びかけに、アンリエッタはチラリと目を向けるも、直ぐに士郎に顔を向ける。

「どれほど無責任な事を言っているのか自分でも承知しています。非難も甘んじて受けましょう。ですが、撤回はしません。わたくしは、シロウさんの決定に従います」

 アンリエッタと、士郎の視線が交わる。士郎を見つめるアンリエッタに、誰かに縋ろうとするような弱さは見えない。腕を組んだ士郎は、目を閉じ黙り込んだ。
 誰も声を上げない、大晩餐室に息を吸い、吐くだけの音が響く。形となって誰かの耳を揺らすものがないまま、時間だけが過ぎていく。
 そして、数秒か、それとも数分かの沈黙の後、静かに士郎は口を開いた。

「―――“聖戦”に参加するかどうかは、まず先程の問いの答えを聞いてからにしたい」

 瞼を開き、ヴィットーリオを見た士郎は、再度問い掛ける。

「―――なぜ、今なんだ?」

 嘘や偽りは許さないとばかりの強い目に、思わずヴィットーリオは苦笑を浮かべた。テーブルの上に置いた手の先、指で鍵盤を叩くようにヴィットーリオは硬いテーブルをトントンと鳴らす。

「“聖戦”となれば、その結果の如何に問わず、先程の説明でも分かるとおり、多大な犠牲が出ることは理解している筈だ。それなのに、何故だ? 今はガリアの件もあって、平和とは言いづらいが、そこまで人心が乱れているとは思えない。そう“聖戦”を起こしてまで“聖地”を取り戻さなければならない程の切羽詰った状況ではないはずだ。荒れた人心を癒すため、平和のためにと、聖地を求めるのは良い。時間がかかるが、争いが起きる可能性が低い方法はいくつもあるからな。だが、あなたは“虚無”を利用し、更なる混沌を呼び起こす危険性がある方法を取ると言う―――何故だ? 何を焦っている?」

 ―――トンッ! と一際強くテーブルを叩く硬い音が響いた。一瞬の静寂の後、声を上げたのヴィットーリオだった。

「……焦っている、ですか」

 落としていた視線を上げたヴィットーリオは、士郎を見
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