第十三章 聖国の世界扉
第五話 世界ガ悪魔ニ壊サレル前ニ
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
かは分からないが、それでも、エルフが並の、いや、一流のメイジよりも強大な力を持っていることは確実だ。他にも、エルフの薬と言うものがあるな。人の精神を狂わせる薬だそうだが……偉大と呼ばれるメイジでもその薬が一体どうやったら作れるのか想像も出来ないらしい」
「……それだけの力を持ったエルフが復讐を始めたら一体どうなることでしょうか。エルフの寿命は数百年はあると聞きますが、それが真実であるならば、一人のエルフがその生を全うするまで復讐を続けるとなれば、それこそ数千、いえ、数万の犠牲者が出ることになるでしょう」
透明で薄く―――深い青をたたえた瞳で、アンリエッタがヴィットーリオ、そしてジュリオを順に見る。
「わたくしのような若輩ものでも簡単に想像できる事が、聖下が予想していない筈はありませんが、聖下はどのようにお考えなのでしょうか? “聖地”を奪った後の事を―――憎しみに染まり、復讐に生きるエルフにどう対処するおつもりなのでしょうか?」
淡々と、静かに、一見すると優しげにさえ聞こえるような声音で、アンリエッタはヴィットーリオに疑問を投げかける。問いに、応えはなく、ただ沈黙が広がるだけ。沈黙という答えに対し、童女がそうするように桃色の薄い唇に指先を当てたアンリエッタは、僅かに口角を上げ目を細め僅かに口を開く。
まるで笑っているかのような顔で、薄く開いた唇から―――どろりとした声が溢す。
「―――殺すのですか? 一人残らず、男も女も、老人も子供も―――エルフを一人残らず殺しますか?」
ひっ、と押し殺した誰かの悲鳴が微かに大晩餐室に響き。沈黙の中にその余韻が消えると、アンリエッタは続きを口にする。
「エルフを全て殺せば、確かに復讐はありません。ですが、それはとても難しいことです。逃げ切られる事もあれば、兵士の誰かが見逃すかもしれません……。何よりも、わたくしたちはエルフについて全てを知っているわけではありません。もしかすると、“サハラ”以外にもエルフがいるかもしれません。もしかすると、それはわたくしたち人間よりも数が多いかもしれません……そうなれば、数に劣り、力にも劣り、賢さにも劣るわたくしたちに勝ち目はあるのでしょうか?」
「―――つまり、あなたは反対と言うことですかアンリエッタ殿?」
沈黙を続けていたヴィットーリオが最初に口にした言葉は、アンリエッタへの問いかけだった。表面上は変わらず慈愛の笑みを浮かべたままのヴィットーリオだったが、今になっては、それはもう本心を隠すための仮面のようにも見える。
「わたくしは賛成も―――そして反対もしません」
「賛成も、反対もしない? それは一体どういう事でしょうか?」
アンリエッタの予想外の返答に、ヴィットーリオだけでなくルイズたちも疑念を向ける。視線に促さ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ