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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第五話 世界ガ悪魔ニ壊サレル前ニ
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心の声を上げた。
 同時に、士郎を挟むように座っていたルイズとティファニアがはっとしたように顔を上げた。士郎に向けられる視線の中には、戸惑いが多々に含まれている。士郎の纏う雰囲気が、明らかに変わっていた。
 素人目でも分かる士郎の変化に、しかしヴィットーリオとジュリオは気にした風も見せず、飄々とした態度を崩さないでいた。

「どうしてぼくが“ヴィンダールヴ”だと思ったんだい? 虚無の使い魔は四つ。“ヴィンダールヴ”以外にもいる筈だよ」
「考えるまでもない。お前の噂はあの戦争の時に良く耳にしたからな。『貴族でもないくせに、誰よりも巧みにドラゴンを乗りこなす男がいる』―――と」

 『ここまで言えば分かるだろ』、と視線でジュリオに告げる。視線にジュリオはにこやかな笑みを返す。ジュリオからの返事に口の端を曲げた士郎は、そのまま視線をヴィットーリオへと向けた。

「さて―――今、この場には三人の虚無の担い手、そして二人の使い魔がいる。伝説と言われる虚無の担い手のほぼ全員を集めた理由が、ただ挨拶がしたかった―――とは流石に考えられない」

 テーブルに肘を乗せ、組んだ手の甲に顎を当てながら、士郎が探るような視線をヴィットーリオに向ける。真意を暴こうとする力ある視線に、常人ならば息が詰まる程の圧力を感じるだろう。だが、流石にこの男は只者ではない。汗一つかくことなく涼しい顔で士郎の視線を受け止めていた。

「そろそろ教えてもらっても良いだろうか―――俺たちを集めた理由を」

 鋭い刃のような鋭い視線を、ヴィットーリオは跳ね返すでもなく受け止めるでもない―――包み込むような笑みを浮かべ受け止め、口を開いた。

「ふふ……勿論挨拶がしたかったというのもありますが、確かにそれだけではありません―――あなたがたに、一つ協力をしてもらいたい事があるのです」



 
 
 ヴィットーリオが口にした『協力』についての説明を聞き終えた士郎たちは、一様に黙り込んだ。重苦しい空気が大晩餐室を包み込む中、最初に声を上げたのは―――やはり、衛宮士郎であった。

「つまり、簡潔に言えばこういうことか―――エルフから聖地を奪いたいから力を貸せと」
「っふ―――簡潔に纏め過ぎだよ。確かにあなたの言う通りですが、幾つか訂正させて頂きたいね。そう、まずは奪うのではなく取り返すんだ。“聖地”は元々ぼくたちのものだったんだからね。そして、別にぼくたちはエルフと戦うつもりはないよ。虚無の力はエルフから聖地を取り戻すための“交渉”に使わせてもらうだけさ」
「……そこまでして、聖地を回復する必要があるのですか」

 声を上げたのは、士郎でもジュリオでもなく―――ルイズであった。
 士郎たちの視線が一斉にルイズに向けられる。
 ルイズの問いに答えたのは、
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