幽鬼の支配者編
EP.24 想い重ねて
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た左肩をさらに抉られた少年は、焼けた鉄棒をねじ込まれたような痛みに言葉にならない叫び声を上げて地面でもがく。
乱入者二人はミラジェーンを庇うようにして、地面を這いつくばる少年を睨んでいる。
「エルフマン、リサーナ!?」
涙が乾かないままに、ミラジェーンは急に現れて少年をど突いた二人の名を呼んだ。
ある用事から姉を探していた二人だが、ギルドにも借家にも姿が見当たらず、街中を探して回っていた。
そんな時に、蹲り、血が付いた手で顔を覆って泣く彼女と見下ろしている少年を見つけたのだ。
最近元気のない姉を泣かせている……姉想いの彼らには、その元凶の少年に襲い掛かるには十分な理由だった。
惜しむらくは、彼が背を向けていたために、彼がギルドの一員であると気付かなかった事か……。
「姉ちゃんは俺が守る!」
「ミラ姉、血が……って、エルフ兄ちゃん! この人、ギルドの……」
「あ、あれ……?」
「……二人とも、誤解だ。別に苛められてたわけじゃない。……実は――――」
「「ええーーーっ!?」」
姉が弟と妹の誤解を解いている間、少年は肩を抑え、歯を食いしばって痛みに耐えていた。
「これじゃ、俺が悪者だな……ったく、エルザの奴め……」
少女を泣かせた自分に、姉を助けに駆け付けた弟と妹。
客観的に見れば、弟と妹が正義の味方で姉がヒロイン、自分が悪者といったところか……と、少年は溜息をつく。
肩の痛みに涙を滲ませながら立ち上がり、彼らに背を向けた。
「あ……お、おい、お前、名前は?」
「……一応同じギルドなんだけど……ワタル・ヤツボシだ」
ミラジェーンの言葉に疲れたように脱力して、左肩を抑えながら答えると、少年・ワタルは歩き出した。
そんな彼を、弟たちの誤解を解き終えたミラジェーンは呼び止める。
「ちょっと待て!」
「……まだなんかあんの?」
「い、いや、その……あ、ありがとう」
「礼ならエルザに言ってくれ。アイツに相談されなきゃ、こんなことしねえよ。……さて、悪者は潔く退散するとしますか」
生来の強気な気質からか、目を合わせずに小声で礼を言うミラジェーンに、ワタルはそう応えると、そのまま有無を言わせずにその場から立ち去る。
加入から一ヶ月経ってもギルドに馴染めない者がいる。同年代の少女なのだが、何とかならないだろうか……。
彼がミラジェーンを探していたのは、エルザにそう相談されたからであった。
「……ワタル、か……変な奴。……フフフ」
「姉ちゃん?」
「ミラ姉? どうしたの?」
急に笑い出したミラジェーン。
希望も何も見えない、明けない夜のように真っ暗な道を歩き続け、自分でも気付かないうちに奈落の底へと足を向けてしまいそ
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