幽鬼の支配者編
EP.24 想い重ねて
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、ならば排除するだけ……戦闘態勢になった彼女に、少年は笑い、軽い調子で挑発した。
「いいね、掛かって来いよ。こんなギルドだ、そっちのが手っ取り早い。その腕の悪魔の力……見せてみろよ!」
「黙れ!」
悪魔、異形の右手。故郷を追い出された元凶の右手を、ボロボロの心が軋むのを無視して、目の前で嗤う気に入らない少年に叩きつけるように振り回す。
爪にしても拳にしても、彼女は力の限りに、暴れるように振るったが……その全てを身軽に躱されてしまう。
「お、結構やるじゃないか」
「うるさ――うわっ!?」
余裕の挑発。
苛立ったミラジェーンは拳を大きく振りかぶって殴りかかるも、大ぶりの一撃を見切られて腕を掴まれ、彼女自身の力を利用されて投げ飛ばされてしまう。
「う、ぐ……」
石床に叩きつけられて呻きながらも、起き上がろうとしているミラジェーンに、少年はふと声を掛ける。
「……接収っていうのはな、敵を倒して屈服させた証みたいなものだ」
「な、何を……?」
「あー……そうだな……」
這いつくばる彼女の目線に合わせるように、少年はしゃがみこんで……笑った。先ほどまでの癇に障るような嘲笑いではない、純粋な笑みを浮かべたのだ。
「……自分を誇っていいっていう、目に見える証さ」
「(誇り……? 誇りだと……?)」
くすんだ灰色だったミラジェーンの心に、久しぶりに色が戻る。
それは煮えたぎるマグマのような赤……すなわち怒りだ。
「……るな……」
「ん?」
「ふざけるな!!」
「うわっ!?」
久しぶりに感情を表に出したミラジェーンは怒りのままに、少年に襲い掛かった。
飛び退く少年に、追い打ちを掛ける。
「こんなもの、誰が好きで手に入れたりするもんか! こんなものがあったから、私は、私たちは……!!」
「……」
「なんで私たちがこんな目に合わなきゃいけない!? こんな、こんな望んでもいない力のせいで……!!」
「……チッ」
溜まりに溜まった黒い感情が堰を切ったかのように流れだし、ミラジェーンは悲痛な叫び声とともに、先程よりも苛烈な攻撃で少年を襲う。
激しい攻撃だったが、それは激情に身を任せたものゆえに読みやすく、少年はその悉くを身体と足捌きで躱していたのだが……沈みゆく太陽の光に反射してキラキラと光るものを見て舌打ちした。
「フッ!」
「な……!?」
次の瞬間、伸ばされた異形の右手の鋭い爪に左肩を切り裂かれるのも構わず、少年は一息にミラジェーンの腕と身体の間……懐に入り込んだ。
鮮血が舞う。
自分の身を省みない彼の行動と、肉を抉る気味の悪い感触に彼女が思わず手を止めた直後、彼は流れる血も構わずに右手で彼
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