幽鬼の支配者編
EP.24 想い重ねて
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っている弟の姿を認める。
「(私、は……)」
窮地に立たされる弟を助ける力は今の自分には無い。
自分の無力を嘆くのは、いつ振りだろうか痛みと無力感の中で、彼女は思い出す。
妹の死を。
そして……妖精の尻尾に入ったばかりのころ、暗い思考に落ちていくばかりだった自分を救ってくれた家族と、ある男の子の事を。
= = =
6年前、X778年。
とある村に住む13歳のミラジェーン・ストラウスは、少しばかり貧乏なだけでやんちゃな普通の子供だった。
両親は早くに亡くなり、家族は弟と妹だけ……そんな自分たちを村人は優しく接してくれていた。
その時が来るまでは……。
ある日、村の様子がおかしい事に気付いた彼女はその原因、悪事をはたらいている悪魔が憑いてしまった教会に足を踏み入れてしまう。
悪意があるだけで犬や猫とそう変わらない下級の悪魔を、彼女は見事討伐に成功した。
いつも自分の悪戯を怒る大人たちだって、きっと褒めてくれるだろう……彼女はそう思っていたのだが……
「出て行け!」
しかし、彼女の思惑とは外れ、そうはならなかった。
退治した悪魔の一部を身に受けてしまったばかりに、優しかった村の人たちが掌を返したように、幼かった彼女に石を投げるたりと、迫害を加えていったのだ。
悪魔憑き、悪魔に呪われた娘だ、と。
やがて迫害の手は妹や弟にまで伸び、幼かった彼らは生まれ育った村を出ざるを得なかった。
砂漠、荒野、洞窟に森林……人のいない場所を通る時は良かったが、町や村など、少しでも人通りのある所では大きめのローブをかぶり、異形と化した右腕を隠さなければならなかった。でなければ、また弟や妹が傷つく、と。
当時の彼女には、その生活は強いストレスとなり、まるで坂を転がり落ちるボールのように、明るくて活発だった心はどんどん暗くなっていくばかりだった。
妖精の尻尾を見つけたのはそんな時だ。
「それは呪いではない。接収というれっきとした魔法じゃよ」
悪魔の力を宿す魔法……そんなものを願った訳では無いし、欲しくも無かった。魔法とは、もっと明るくて、人を幸せにするもの……そうではなかったのか。こんな力があったから、故郷を追われる羽目になったんじゃないか。
本当の事を教えてもらっても、彼女の沈んだ心が晴れる事は無かった。
それどころか、自分と違って明るいギルドに溶け込んでいる弟と妹に比べれば、思考はますます深みにはまっていってしまう。
自分は人間ではないのだ、と。
人間でない自分が、弟や妹と同じ場所にいられる訳がない。
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