幽鬼の支配者編
EP.24 想い重ねて
[11/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
うだった。
そんな自分には、彼の行動と言葉が、まるで長い夜を終えて夜明けを告げる光明にも感じられたのだ。
しばらく見ていない姉の笑顔に困惑したエルフマンとリサーナは尋ねたが、彼女はそれに応えず、今まで心が沈んでいた分を取り戻すかのように溌剌と笑いながら、自分を心配して来てくれた二人の頭を左手で、そしてワタルが魔法解除した右手も使って撫でる。
「さあ、二人とも、明日は朝一で謝りに行くぞ」
「あー……うん、だよね……」
「怒ってないといいけどなぁ……」
狼狽える妹と弟と共に、ミラジェーンは久しぶりに晴れやかな気分で帰路に着いたのだった。
= = =
忌み嫌っていた自分の力を、大事な人を守れる力だと言ってくれた人がいた。
それは紛れも無く光になって、真っ暗だった自分の道を照らしてくれた。
不幸を呼び込んだと、嫌っていた自分の力と向き合い、自信を持つことができたのだ。
だが、自信と傲慢は紙一重。
S級と呼ばれる他の魔導士とは一線を画す存在になった時……ミラジェーンは自分でも気づかないうちに奢りを抱いていた。自分は仲間を、家族を守れると歓喜し、それを疑わなかったのだ。
そして……現在から2年前のX782年、彼女はS級クエストに補佐として連れて行った妹のリサーナを喪う事によって、その傲慢のツケを払わされることになってしまう。
「さて、今度こそ終わりにしてあげましょうか」
かつては“魔人”と恐れられても、今はすっかり魔力が衰えてしまった姉の苦しむ姿、それに対して何もできない自分の無力……エレメント4の一人・大地のソルにとって、標的のそんな絶望は極上のワインにも勝るほどに甘美な物であった。
普段ならもっと味わってからとどめを刺すところだが、一度失敗した自分に再度の失敗は許されない。
ジョゼの怒りに恐れを抱くソルはそう考えると、手を掲げ、鋭い石の杭を精製して切っ先をエルフマンの喉元に向けた。
当のエルフマンは捕らわれの姉・ミラジェーンの姿しか見えていないようで、自分が命の危機にある事を気付かない。
ただ、無力に泣く姉の安否を気遣うのみだ。
「なんで、また……姉ちゃんが泣いてんだ……!」
自分の失敗でリサーナが死んだ。
あんな思いはもうしたくない。姉の嘆きの涙は二度と見たくない。
だから、姉を守れるくらいに強くなりたいと願ったのだ。
なのに、今、姉は捕まって苦しみ、泣いている。
その事実に激昂したエルフマンは、怒りのままに叫んだ。
「姉ちゃんを、放せぇえええええええええええっ!!」
今再び……大切なものを守るために、力を願おう。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ