幽鬼の支配者編
EP.24 想い重ねて
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「全員伏せろぉおおおおっ!!」
魔導集束砲・ジュピターの砲塔に魔力が集中し、目が眩むほどの膨大な魔力を球状に形を変えていく。臨界に達して発射直前のそれを前に、エルザは恐慌状態に陥っているギルドのメンバーに命令すると、危険を顧みずに走り出した。
彼女一人の力で止められるかどうかは分からなかったが、止められなければギルドが、仲間が、街が消し飛ばされる。危険だろうがなんだろうが、何もしないまま指をくわえてそれを許す事は出来なかったのだ。
「やるぞ、エルザ」
それはワタルも同じだった。
オーク支部への殴り込みに参加しなかったのは自分の意志だったが、ギルドを、そして仲間を守るためなら躊躇いは無い。
その想いで、この身を犠牲にしてでもジュピターからギルドを守ろうと、強い防御力を持つ“金剛の鎧”に換装したエルザの右隣に立つ。
「どうするつもりだ?」
「……ん」
銀色に輝く鎧を纏ったエルザの問いに、ワタルは左手を差し出す。
「……正気か!? 成功どころか、試した事さえもいないんだぞ!?」
「大真面目だ。魔導集束砲に真っ向から対抗するなら、打つ手はこれくらいしかないだろ。それに……」
驚愕の顔をするエルザに、ワタルは言葉を切って目を閉じる。
すぐに開けた目には動揺は微塵もなく、彼は不敵に笑った。
「お前を信じてるしな」
「…………ああ、分かったよ。私もお前を信じるよ」
真正面からのまっすぐな言葉に呆気にとられるエルザだったが、すぐに微笑み、籠手を外すとワタルの左手と指を絡ませた。
「よし……集中しろよ、エルザ!」
「誰に言ってる? お前こそ、しくじるなよ!」
「抜かせ!」
ふてぶてしく笑いながらも、二人は互いの熱を確かめるように手を強く握りしめ、そのまま繋いだ手を水平に上げて魔力を集中させる。
要塞すら一撃で消し飛ばす魔導集束砲にたった二人で立ち向かうなど、無茶としか言いようがない。
だが、ギルドメンバーのそんな恐慌どころか、目前の脅威である発射直前の“ジュピター”すら、二人の耳と目には入っていなかった。
互いの姿と魔力しか感じられない、波一つ立たない水面のように静かな世界。
心や魂といったものが澄み渡り、浮き彫りになっていくような世界で、ワタルとエルザは少しの恐怖も感じてはいなかった。
「ワタル……」
「ああ。今なら、何だってできそうだ」
目を閉じ、感じたのは千分の一秒の世界すらも支配できそうな全能感。
隣に彼女が、彼が居てくれる……それなら不可能な事は無い。
絶対の信頼が源となり温かい力が生まれる。
二人は目を見開き……迷うことなくそれを解き放った。
「「“合体魔法”!!」」
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