ドニ、襲来
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
その日、東京は闇に包まれた。
午後八時。突如として、都市全ての電力供給がストップしたのだ。それだけなら、大規模な停電としても考えられる。しかし不可解なのは、車や携帯電話、時計などといった、送電に頼らない代物までが軒並み動かなくなったことだ。
更に、停電対策として自前の発電設備を持つはずの大規模病院すらも、発電設備を始めとした全ての機械が動かなくなり、病院は阿鼻叫喚の地獄と化した。
街では、走行している最中に突然コントロール不能になった乗用車同士の衝突事故が多発し、至る場所で火災が発生している。当然救急車両など出動できない状況なので、被害は拡大する一方である。
一切の明かりを絶たれた都市は、月と星明かりと、炎により彩られている。
そんな東京の海に、手こぎボートで入ってきた愚か者が一人。
「ふぅー・・・。やっとついたよー。」
彼の名はサルバトーレ・ドニ。裏の世界では、【剣の王】として恐れられる、神殺しの一人であった。
ほぼ同時期に日本を目指していたヴォバン侯爵と違い、彼は近くの国までは飛行機で、そのあとは船で、日本へと近づいていた。ヴォバン侯爵も彼も、生粋の戦闘狂である。本当なら飛行機でさっさと到着したかったが、彼が興味を向けている【混沌の王】草薙護堂と戦うには、どうしても【伊織魔殺商会】が邪魔だったのだ。
三月に行われた鈴蘭との戦闘で、彼女が『隔離世』と呼ばれる場所へ強制的に連れて行く能力を持っていると知っている彼は、鈴蘭がドニと草薙護堂との戦いを邪魔してくる可能性を考えていた。
空間転移を自在に行使する彼女には、距離の概念など存在しない。自分が日本についたとバレれば、即座に邪魔しに来るはずだ。
だからこそ、彼が考えた対処法は一つ。
―――自分の居場所を、把握されなければいい。
飛行機では、空港にしか行けない。いや、【鋼の加護】を発動した上で、ハイジャックして飛行機ごとビルにでも突っ込めば行方を眩ませるには十分かも知れないが、本命と戦う前に余計なダメージを喰らい、呪力を消費するわけにも行くまい。
そこで彼が取ったのは海路であった。
海は広い。特に夜間の海であれば、人一人が漕いでくるボートを見つけるのは至難の業となる。
・・・とはいえ、海上自衛隊の存在もあった。だからこそ―――
だからこそ、彼はこの手札を切ったのだ。自分を監視する機械類を無力化し、更に、信じられないほど高度な技術力を持つと言われる【伊織魔殺商会】の戦力を削ぐための手段として。
彼は、公表していない、三つ目の権能を使用した。
【いにしえの世に帰れ】。この権能は、ローマ神話の火と鍛冶
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ