暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
プロローグ リセットの享受
プロローグ 郷愁の日々 その壱
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も俺を魅了していた。

 初期装備の片手剣≪スモールソード≫を売り払い、手持ちのコルとでジャマダハルとポーションなどを購入した。手持ちはすっからかんになり財布が随分と寂しくなってしまったが、むしろ購入したという所持欲を満たして満足した俺は女店主に軽く礼を言って≪圏外≫――モンスターのいるフィールド――へ意気揚々と走って出かけた。

 そして現在、午後四時四十分に至る。
 青と赤の境界線ともいえる空模様の中、広い草原に俺は居る。

 SAOの世界≪アインクラッド≫では外の時間とリンクしている。だからおおよそ六時ぐらいには夕暮れとなる。今は赤と青の中間という時間帯だ。

 そしてどちらかといえば青色の空と緑の草原で俺に対峙するモンスターがいる。

 そのモンスターは青色の猪というのが適切だろう。というかそれ以外には大した特徴はない。名前を≪フレンジーボア≫。レベル1でこのアインクラッド最弱のモンスターだ。
 俺はそのモンスターをこれでもかと睨み付ける。すると青猪の体の周りにHPバーが出現した。
 その色は満タンを示す憎憎しい青色だ。レベル1モンスターなので満タンからでも普通は二回か三回ほど斬れば倒すことが出来る。実際、周りのプレイヤー達はソードスキルを数回使って『ポコポコ楽勝〜』という風に倒しまくっている。時にはレベルアップのファンファーレすらも鳴っている。
 そう俺を除いては。

「……フッ! ……スッ! ……はぁ!!」

 一撃一撃に懇親の力を込めて青イノシシをジャマダハルで刺す。その剣先がブスリブスリという効果音をたてながら徐々にイノシシのHPを減らしていく。

「死ねっ! このっ! イノシシ風情がっ!!」

 現実の俺なら滅多に言わないことを、アバター≪スバル≫は見た目に則した台詞を吐く。しかしこれはロールプレイではなく本心だった。切実な思いだった。

 イノシシのHPはやっと半分を下回ったのは戦闘開始から十分が経ってのことだった。その理由は俺が臆病だとか逃げ腰だというわけではない。むしろ俺は積極的に、時にはダメージ覚悟で攻撃しているのだ。しかし。
 減らない。滅茶苦茶に減らない。悔しいまでに、減らない。悲しいまでに、減らない。

 ジャダマハルは火力不足だった。データの上で確認すると片手剣を圧倒的に上回る火力設定なのだが、刺突以外では適正な火力が出ない。しかもリーチが短いため必然的に攻撃が浅くなってしまう。防御力貫通という中々強力そうな効果はあるにはあるが、この≪フレンジーボア≫にはもともと防御力という概念は皆無らしくその特性を活かせていない。

 そしてイノシシのHPがやっと五割減った、という頃には俺のHPも五割手前まで減っていた。

「うっおおおおおおおおおおおおお!!!」

 俺は
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