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【短編集】現実だってファンタジー
虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・霊の章
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『ば、馬鹿な……何故だ!?何故よりにもよってタケミカヅチが出てくる!?おのれ、稲荷明神の使いならばまだ勝負になったものを……!!』
『はっはっはぁ!!そういえばお前達狗神の系譜はそろいもそろって雷が嫌いであったなぁ!!確かに犬の鋭敏なる耳に我が猛き轟きは辛いやも知れんがなぁ!?』

「ゐんがみ」の動揺した姿に、タケミカヅチは不敵な笑みを浮かべて凄んだ。
――どうやら、狗神に名を連ねる存在は代々雷、転じて電気が嫌いらしい。確かに雷の音は犬をパニックにさせると聞いたことがある。狗神にとってタケミカヅチは最悪の相手だと言えるだろう。
つまりこれは――形勢逆転?

「タケミカヅチさま……私の親友たちの無念を晴らすために、殺っちゃってください!!」
『心得たりィッ!!おぉぉぉぉぉ……雷ァァァァァァアアアアイッッ!!!』

タケミカヅチが剣を振るうと同時に、女将に憑りついた「ゐんがみ」へ極大の雷の柱が飛来した。
「ゐんがみ」がいかに人知を超えた力を持っていようと、タケミカヅチは純粋な武神である。土着信仰の神のなれの果てで恨み辛みを餌にこそこそ生き延びてきた「ゐんがみ」では逆立ちしても勝てる訳がない。

『何故だ!何故だぁ……ほんの数百年前まで、貴様ら人間は我を畏れていたではないか!貴様らは何ゆえにそこまで変化できる!?そこまでも強欲に、神を取捨選択する!!挙句、神の力で神を殺すなどと……』
「お前は神じゃない!人を襲うだけの悪神だ……人に降りかかる災厄でもない、ただの殺人愉快犯だ!そんな者を敬う人などいるものか!!――神なき世界には、新しい風が吹くんだ!!」
『貴様が狐憑きでなければ……!貴様がこの日にこのような場所に来なければ……!!貴様の所為で我は……グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

「ゐんがみ」は雷の柱の中に消え、その後には憑き物の落ちた女将だけが残されていた。



――数日後、キクノは「いつもの5人」と一緒に住んでいた町まで帰り着いていた。

「ん〜……いやぁ、大変な旅行だったね!まさか旅館の近くに特大の雷が落っこちるなんて!おかげであの日の夜に何やってたか忘れちゃったよ!」
「まーいいじゃん?別に停電したわけじゃないし、雷も空気読んで逸れてくれたんだよ!」
「……実は俺も、あの日の夜の事覚えてないんだよなぁ」
「キミのそれぁ単純に記憶力がワリィんとちゃいますかね?」
「ンだとゴラァ!喧嘩か?喧嘩だな?買ってやるぜこのヤロォ!」
「あははは……まあまあ、いいじゃないのみんな助かったんだし!」

5人は自分が死んだ時の事を覚えていない。
あの後、私はタケミカヅチさまに皆が成仏できるように導いてくれないか頼んだ。すると、タケミカヅチは心外だとばかり気顔を
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