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【短編集】現実だってファンタジー
虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・霊の章
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がみ」を祓う力を……お貸しください!!」

結界が神気の淡い輝きを放ち、札を起点に四方の陣を囲んでいく。
同時に、祭壇まで続いていた階段から聞き覚えのある唸り声が響いた。恐ろしく、生気を根こそぎ削るようなぞっとする悪寒が背中をなぜる。
――あいつが、来た。

はやく、はやく――心ばかりが焦り、自分の掌を固く握りしめる。
神気はあるのだ。もう祈りは神界へと届いている筈だ。

ひたり、ひたり、と音を立て、腐臭と獣の体臭を混ぜ込んだむせるような悪臭がゆっくり降りてくる。周辺の温度が数度下がったような錯覚。どんどん近づいてくる。恐怖と焦燥が心臓の鼓動をバクバクと加速させ、冷たい脂汗が溢れ出る。

「お願い申し上げます!来てください……来てぇぇぇぇーーーーッ!!!」


おぞましき神が踏み込んできたのと、神性が舞い降りたのはほぼ同時だった。

バチバチィッ!!と弾けるような電光が奔り、押し寄せる負の気を跳ね返す膨大な正の気の奔流が全てを押し返した。力強く、眩しく、暖かく――

『やあやあ、遠からぬ者は音にも聞け!近くば寄って目に物を見よ!!我こそは大和の国に名を轟かす武と雷の益荒男――タケミカヅチなりぃぃぃッ!!!』

「………………あれ?」

現れたのは狐じゃなく――本当に全然狐ではなく、筋骨隆々で巨大な剣を握った、雷のように荒削りな大男だった。

「た、タケミカヅチ………?な、何で!?稲荷明神と全然関係ないのに!?」
『ふぅ、現世に現るるは幾星霜ぶりかな……娘!お前は実に運が良い!さきほど突然神界にげに美しき雷が飛来してな!込められた莫大なる力と男気を吸収した我は今、至極!絶好調!!なのだ!!!』

ずずいとこちらに顔を近づけるタケミカヅチ。暑苦しい、というか暑い。顔が濃すぎて余計に引く。あまりにハイテンションかつエネルギッシュなその姿にキクノは思わず身を引く。そして、その日本神話随一の武神の言葉を咀嚼して、ある事実に気付く。

「………あ、貴方の方から割り込んできたんですかぁッ!?いや、心強いですけど!!すごく心強くはありますけどッ!!」

――そう、カシアスが天帝を貫いたあの雷は次元の壁を突き破って、なんと神界に住まう剣と雷の神「タケミカヅチ」の乾燥地帯の山並みに燃えやすい心に火をつけ、更には燃料も注いでしまったのだ。
それにしてもタケミカヅチのテンションが高い。なんか想像してたのと大分違うんですけど、とキクノは自分の反撃計画に間違いがあったような気がしてきた。

『で?確か「ゐんがみ」とやらを祓いたいのであったな?お前の所望通りに消し炭一つ残さず葬り去ってやろうではないか!後ろにいる下級悪霊だな!?……ほうほうなるほど!元は狗神の眷属だったものが、信仰を得られずに妖化してしまったようだな!』
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