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【短編集】現実だってファンタジー
虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・霊の章
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ふたつ――「ゐんがみ」の祟りを跳ね返すには、別の呪いを重ねて呪い返すしかない。
みっつ――異界化したこの空間の地下に、儀式のための陣が存在している。
そして、もうひとつ。
私、キクノの家系はどうやら「狐憑き」――狐の守護を受けた家系であるらしい。この家の家計図などを見るうちに、よその憑き物の家系図を発見して判明した事実だ。そこに至って私は納得した。
ずっと疑問に思ってはいたのだ。何故「ゐんがみ」は私に憑りつかず、私だけは直接的に殺そうとするのか。「ゐんがみ」は私の身に限っては剥き出しの殺意で殺そうとしてきた。それは、ユウヤのように憑りついて殺すことが出来なかったからなのだ。
――自身の天敵である「狐憑き」の加護が邪魔だったから。

だから、私はそれを逆手に取った。「ゐんがみ」が直接手を下せないという利点を最大限に活かし、とうとう地下の祭壇までたどり着いたのだ。全力疾走の疲労でぜいぜいと荒い吐息を漏らしながら、私は震える足に力を込めて前へ進んだ。
この祭壇に布かれた陣は「ゐんがみ」のためのものだが、召喚の儀の手順を変えれば別の存在も召喚できる。重要なのは手順だった。
屋敷の中で手に入れた霊石を祭壇に奉る。
お香を炊いて現世と霊界の空気を近づける。
そして、狐が好きな油揚げ――これが冷蔵庫にあったのは幸運としか言いようがない――を置いて、もてなしの準備を済ませる。
最後に、包丁で自分の指先を軽く切り、じわりと染み出た血液で御札に血印を押した。
狐の神性を引き寄せるために私の取りうるすべての準備が終わった。

私はもっと生きていたい。「ゐんがみ」などという訳のわからない存在に呪い殺されて知らない土地に骸を晒したくなどない。何より――死んでしまった皆の無念を晴らせるのならば、晴らしたい。

「おいでませ、おいでませ……稲荷明神様にお祈りたてまつる……」

呼び出すのは唯の狐の霊魂では駄目だ。「ゐんがみ」のような不浄なる荒々しい霊をも鎮める力がなければいけない。正の気を持ち、神通力などの力を人に与える天弧、もしくは空弧。稲荷明神の系譜に連なっているならばもう何でもいい。

「おいでませ、おいでませ……憑きたる(えにし)にどうかお答えください……!」

「ゐんがみ」は今、一時的に動きを封じている。何をしても通用しなかった「ゐんがみ」だが、何故か護身用のスタンガンだけは異様に怖がっていた。これだけは文献を読んでも答えが出なかったが、電気が怖いのだという仮定のもとにあいつを自家発電機近くまでおびき出して部屋に閉じ込めた。
それでも、長くは持たないだろう。発電機の燃料は下手をすればもう切れているかもしれない程に少なかった。

「どうか……どうか、お答えください!私の親友たちを、何の関係もなかった友達の命を奪っていった「ゐん
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