龍と覇王は天前にて
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に、華琳はそれを待たずして、無理やりに割って入ったのだ。
幾人かの文官達の表情が怒りに歪む……だが、激発する前に劉協がゆるりと手を上げて制した。場内は怒りの空気があった事を忘れ、瞬時に冷え込み、収束された。
何故、と疑問に思うモノは多くとも、帝の制止があっては口に出せない。そうなれば興味は華琳に向き、次なる言葉を待ってしまうは必然。
劉表に偏っていた雰囲気を帝に変えさせる。華琳はそれを為した。平然と、堂々と。
操るでもなく、育てるでもなく、深く関わること無く、ひたすら帝に対して不干渉を貫いてきた希代の天才の事を、劉協は捉えきれておらず、少なからず興味を持っていた。
今の行いを不敬とこじつける事は出来るが……もう一つ、しない理由があった。
華琳の手札には“黒麒麟”がある。劉協が知りたくて仕方ないはずの、洛陽に於いて英雄視されている彼の事を、華琳は大徳の元から引き抜いているのだ。
劉協は帝としての在り方を幼くしてやってのける程の王才を持ち、溢れる昏い話題にも耳を傾けてきた。
子供ながらに宮廷闘争に巻き込まれたという経験は、心の傷と共に一足跳びの成長を促してしまった。しかし、世界の全てを諦観してしまうには……彼女は聡明過ぎて、幼過ぎた。
華琳の不干渉は興味心を引き出している。頭が良ければ良い程に、昏い者達を知っていれば知っている程に、帝を使う事の利を知っているから……噂に聞く天才が自分を使わないのが不思議でならない。ほんの少し、優しく儚げな恩人を思い出させてしまう。
黒麒麟が大徳の元を離れて下に付く存在でもあれば尚更のこと。帝としてでは無く、“英雄達に憧れる子供心”が僅かな希望を傾けていた。
それを見越して、華琳は無礼ギリギリの対応を為したのだった。
「申してみよ」
耳を打った声。ゆっくりと面を上げると、興味を宿した光の見える蒼天の眼が迎えた。
華琳に聞こえる程度の笑いが耳に入った。劉表が漏らしたその笑みがなんの意を以ってか分からずとも、覇王は揺らぎはしない。これから話す事は、変わらない。
「逆臣董卓の洛陽大火は耳に新しく……」
わざわざ其処で目を伏せて言葉を区切られ、劉協の思考は真っ白に染まる。
何故、ソレを口にしたのか。親しかった事は知らずとも、神速の張遼を得たのだから董卓が悪では無い事を知っていたであろうに……顔には出さず、じわじわと悲壮が込み上げ、心に澱みが渦巻いていく。
空白に切り込むかのように、目を見開いた華琳は言葉を続けて行った。
「されども、より大きな悪逆の徒が現れた、とすれば如何致すべきでしょうか」
誰、とは言わず。思考を促すのはいつもの事。それが例え、帝であろうと。
連合総大将の事を言っているのだと考えさせる。河北大乱と徐州の戦は耳に新
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