群雄割拠の章
第四話 「そこで相談じゃ……わしらはどうするべきか」
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らいに優秀な奴だ。
あいつだからこそ、こんな原始的な時代に近代日本に近い安全な国を作れたのだと思っている。
なのに、どうして……あいつはいなくなったのだろうか。
あいつは昔から優秀だった。
あいつと初めて会ったのは、捕らえられていた研究所から助けだされた後だった。
俺に兄弟がいた……最初はびっくりしたし、幼い顔は俺そっくりだったので驚いたことをよく覚えている。
その頃の盾二は感情に乏しかった。
後に記憶を封印された後遺症だったことを、ティアさんから聞かされた時は、かなりショックだったけど。
そう、俺は盾二が本当の兄弟でなく、俺の細胞から生み出されたもう一人の俺であることも知っている。
スプリガン候補になる前、ティアさんと朧から真実を明かされた。
万が一、盾二の記憶が蘇って暴走した時に、俺がそれを抑えるために。
そりゃあ、最初は驚いた。
が、研究所で生まれた時から実験体だった俺。
そういう存在がいても、なんとなく納得できてしまった。
逆に本当に血を分けた存在だとわかって、嬉しかったのも本当だ。
でも、それと同時に本当にあいつは俺から生まれたのか疑いたくもなったけど。
あいつは、俺なんかとは比べ物にならないほど優秀だったから。
あいつはアーカムで、スポンジが水を吸うように様々な知識を蓄えていった。
一般教養から農政学、医学、数学、物理、あげくに帝王学まで、世の中で役に立つと思われるものには貪欲だった。
かわりに純文学なんかは苦手のようだったけど。
そして幼い頃から叩きこまれた戦闘機械の肉体は、盾二を文武ともにエリートにしていた。
その才能は、十六かそこらで指揮官として教育を受ける程だ。
十七にしてA級チームをまとめあげたのは、あいつの天性の才覚だろう。
盾二は……天才だ。
そういう風に『調整』されて生み出されたのだとしても。
俺は、それが自分のことのように誇らしい。
だから俺にできることは、あいつを信じてやることだった。
あいつの指示に真っ先に頷き、どんな指示でもこなせるように自分を鍛え続けた。
そのあいつが……盾二が、俺に何も言わずに姿を消したという。
正直、最初は信じられなかった。
俺に何も告げずに俺の前から消えるなんて、思いもしなかった。
再会してこの一年、俺は俺なりに体を鍛え直すために日夜鍛錬に励んだ。
慣れない部隊の取りまとめや指示など、第三軍の副将としての勉強もした。
あいつを支えることが、ドジって昏睡して迷惑をかけた俺のできる、せめてもの償いとも思っていた。
それなのに、あいつは……俺に一言も告げず、この国を去った。
そして俺は、それを一月も知らなかった。
一月前、
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