番外編:二人っきりの休日
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
ある日の休日の午後。俺と詩乃は駅前の商店街に買い物をしにやってきていた。
というのも、詩乃と彼氏彼女の関係になって以来、時折休日はこうして二人で買い出しに出ているのだ。
秋の商店街は、日に日に和らいでいく残暑を盛り返すかのように活気に満ちている。
「もう秋だね」
傾きかけた日差し。少々肌寒さを感じる風に晒されて、薄着だった詩乃には少し寒かったようだった。
指を絡めて繋いでいた手はそのままに、少しだけ開いていた距離も詰めて寄り添ってくる。
「そんな薄着だと寒いだろう」
苦笑しつつそう言う俺もかなり薄着だが、多少なりとも鍛えている俺にとって、この程度の寒さはどうってことないのだ。
とはいえ、こんなことになるならば詩乃にかけるために一枚くらい上着を持ってくればよかったか。
「こんなに寒くなるなんて思わなかったから……。それに、せっかく燐に買ってもらった服だし一度は着て一緒に歩きたかったの」
それは先週詩乃と一緒に選んだ服だった。その頃はまだ残暑が厳しく、薄着を選んだのだが……。
「そんなことで風邪を引かれたら逆に困るだろうが。俺のために着てくれるのは嬉しいが無理はするな」
「う、うん……ごめん……」
シュンと俯く詩乃の頭を軽く手の平で二、三度叩く。
「でもその服装、可愛いぞ。月並みな言葉で悪いが似合ってると思う」
「ぅ……そんな不意打ち。反則だって……」
落ち込んだ顔は一瞬で朱に染まる。そして、自分の顔を隠すかのように詩乃は俺の腕に顔を押し付けてきた。
その時、少々冷たい風が吹いたが、恥ずかしさで文字通り熱くなっている詩乃は寒さを感じなかったらしい。
顔を俺の腕に押し付けているため、前が見えない詩乃を少しだけ抱え上げるように歩くこと数メートル。一人のふくよかな女性が近寄ってきた。
「相変わらずあなたたちはラブラブねぇ……若い頃を思い出すわ」
「……うぁ……」
「詩乃はいつまで経っても初なんだから、弄るのはやめてくれないか?」
「いいじゃない。恥ずかしがってる彼女さんは可愛いんだから」
このふくよかな女性は商店街で惣菜屋を営んでいるのだが、人の恋愛事情をネタにからかうのが大好きらしい。
この商店街は良くも悪くも地域密着型で、古い雰囲気を残している場所だ。
交通の便が良く、俺と詩乃は毎週ここで買い物をするのだが、若い客……しかもカップルというのは珍しくらしく、完全に覚えられてしまったらしい。
もちろん、それが悪いことというわけではなく、オマケを付けてもらったりしてもらっているわけだが……。詩乃に取っては災難なことによくからかわれるのだ(俺は慣れた)。
何度からかわれても初な反応を返す詩乃はあっという間に商店街
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ