第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
日向
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であることは、変えようがないようにな」
ネジの言葉にヒナタの目が見開かれ、声が震える。凍風のような言葉は一瞬にしてヒナタの僅かに残った勇気さえ掠め取り、彼女は冷たい瞳をした従兄の鋭い眼光に射すくめられたまま、どうしようもなくなってしまった。
「――ユナトさんは、どう思います? その、人が変われるかどうかについですが」
そっと問いかけてくる、目の前に立つ少年少女と同じ色の瞳をした青年の声に、ユナトはそうっとため息をついた。瞼の裏に過ぎるのは以前の自分。他人にばかり気を遣って生きていたあの頃。自分が空っぽの袋みたいに思えたあの頃。自分の価値をしったあの頃。
「変わることは出来ると思うです。――でも、どこに向かって転がったって、今よりいい人間になることなんて出来やしない。前の欠点が、違う欠点になっただけだから」
他人に気を遣いすぎていたあの頃、そして、他人に全く気を遣わない今。どちらがマシなのかはわからない。おそらく、どっちも同じくらい悪いのだろう。他人に気を遣ってばかり生きるということがいいことであるとは限らず、そして、他人に全く気を遣わないことが悪いことであるとは限らないのだ。
「今までこの白眼で、あらゆるものを見通してきた。――だからわかる! 貴女は強がっているだけだ。本心では今すぐこの場から逃げ出したいと考えている」
「ちっ、違うっ! 私はほんとに……!」
ヒナタは慌ててその言葉を否定するが、しかしネジの言葉に怯え、震えていたヒナタがそれを言っても信憑性は無いに等しい。
白眼――日向一族に受け継がれてきた血継限界。洞察力だけなら写輪眼も凌ぎ、遠くを見渡したり、透視を使用するのにも用いられる。人体の経絡系を見通してそのチャクラの流れをしることが出来、ネジ程の使い手となれば、点穴すら見切ることができるのだ。
「――白眼ッッ!」
そして開かれた従兄の白眼に、ヒナタは一層慄いた。強い圧力をかけてくるその目に耐え切られなくなったヒナタの視線がまず左上に移り、次いで、右下に移る。両手を胸の前に置き、片方の手を口元に近づけ、視線をネジから外す。そんな一つ一つの仕草の持つ意味を白眼で見て取ったネジは、冷ややかに、そして淡々と告げた。
「俺の目は誤魔化せない」
「っ!」
視線を左上に泳がせたのは、過去の体験を思い出しているサイン。ヒナタにとってのつらい過去を思い出していること。その後直ぐに右下に動いた視線は、肉体的精神的な苦痛をイメージしていることを表す。つまりヒナタは、昔の自分をイメージし、これまでの経験から、この試合の結果を想像したのだ――“負ける”という想像を。
体の前に腕を構えると言うその行為も、ネジとの間に壁をつくり、距離をとりたいという心の現われであり、これ以上自分の本心に
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