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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十四話  憂鬱
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も付き合うんだが……」
夫が溜息を吐いた。

そんな事は出来る筈がない。夫の命を奪おうとしている人間は多いのだ。今も屋敷の周囲には警護の兵士が大勢居る。私だって外出は出来るだけ控えている。キュンメル事件を忘れる事は出来ない。もう少しで夫は殺される所だったのだから。
「これでは何のために結婚したのか……、義父上が出かける筈だ、情けない夫だよ、私は」
俯いて首を振っている夫が愛おしかった。外では弱い姿を見せられない人が私の前では見せている。それだけで愛おしかった。

「私は後悔していません」
「ユスティーナ」
「幸せですよ、私は。貴方とこうして一緒にいられるんですから」
言ってから恥ずかしさで顔が熱くなった。夫が困ったような表情をするのが分かってさらに熱くなった。でも本心だった。夫と結婚した事を後悔はしていない。

「もうすぐ宇宙は平和になるだろう。そうなれば少しは時間が取れるようになると思う。もう少し我慢して欲しい」
「はい」
戦争が近付いている、そう思った。夫がそれを口に出した事は無い。でもなんとなく分かる。最近自室でじっと考えている事が多くなった。その時の表情はとても厳しい。戦争の事を考えているのだと思う。宇宙を平和にするための戦争。本当に平和になって欲しい、そう思った……。



帝国暦 489年 8月 5日  オーディン ミュッケンベルガー邸  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



お茶の時間が終るとリビングには俺だけが残った。ユスティーナは片付けとは言っているが本当は俺を一人でゆっくりさせたいのだろう。彼女には寂しい思いばかりさせている。済まないな、ユスティーナ。何時か必ず埋め合わせはしよう。

義父殿は在郷軍人会か……。参るね、あそこは年寄りが多いからな。親近感が有るのかもしれないが話題になるのは孫がどうしただの曾孫が生まれただのって話が多いんだよ。そうなるとミュッケンベルガーも孫が欲しいってなるんだろう。俺には言わないがユスティーナには時々訊いて来る時が有るそうだ。まあ時々だし軽くではあるそうだが。

子供か、今は拙いよな。ユスティーナが妊娠したと知ったらアホ共が何を考えるか……。俺にダメージを与える事が出来るなんて考えてユスティーナの命を狙いかねない。避妊すべきかな? でもなあ、ユスティーナが悲しむだろうし……、それを考えると避妊も出来ない。

今から妊娠したとすると出産は来年だよな。今年の年末は出兵準備で忙しい筈だ。そして年が明ければ同盟領に向けて出兵となる。軍事行動期間は大体半年から一年。出産、子育て、一番大変な時期に傍に居てやれない。おまけに帰ってくれば直ぐにフェザーン遷都だ。やっぱり子作りはフェザーンに行ってからかな?

避妊、ユスティーナに相談してみようか。多分彼女は嫌とは言
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