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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
第24話-2 『美月芳夏』
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計佑に甘い言葉をかけてもらえた後なら、いくらかはアリスの事にも耐えられたのだから。

……まあ、最終的にはやっぱり余裕がなくなるのだけれど……

──と、ともかく! アリスに少しでも負けないように、今は計佑くんと!!

 足音をなるべく立てないように──万一、
誰かが起きたりしたら台無しになってしまうかもしれない──静かに歩いて。
出入り口にたどり着いて、振り返って。みんながちゃんと眠り続けている事に安堵して。
 顔を前に戻した時に、ちょうど一人の少女がうっすらと目を覚ましたのだけれど、
そんな事に気付く筈もなく外に出て──

──……あれ?

 自販機の前に、計佑の姿はなかった。辺りを見回してみても、やはり見つからない。

──……コンビニまで足を伸ばした、とか? それとも、やっぱり散歩とかかな……?

 せっかくのチャンスだ、計佑とは絶対に話したい。ならば追いかけないといけないのだけれど──

──……う……や、やっぱり怖い……!

 計佑を見つけるまでは、一人きりで夜空の下を歩きまわる事になってしまう。
 学校といえば、怪談の宝庫。
校舎内に比べれば全然マシだが、極度の怖がりには、敷地内でも夜間とあってはハードルが高かった。
逡巡して、

──こ、ここで待ってれば、その内計佑くん戻ってくるんだし。それからでも……

 臆病少女がそんな逃げ腰の考えに縋りかけて、

ゾクッ……!!

 突然、背筋に悪寒が走った。
何の根拠もない、どうしてそんな考えが浮かんだのかもさっぱりわからない。
 けれど、急に今、計佑がどこか遠くへ──それも手の届かない程の──行ってしまうような、そんな気がした。
その瞬間、一気に駆け出す。
夜道への恐怖など、それより遥かに大きい恐怖の前に、完全に吹き飛んでいた。

─────────────────────────────────

 ホタルに連れられて行く計佑は、

「……な、なあホタル、別に逃げやしないから手は離してくれないか?」

 ずっと手を握ってきたままの相手にそんな声をかけた。
 幼女の頃だったら気にならなかった接触も、
自分よりも歳上に見える程に成長? されては、流石に気恥ずかしかった。

 そんな計佑の訴えに振り返ってきたホタルだったが、その視線は計佑を通りすぎて、どこか遠くを向いていた。

「……なんだ? 何かあるのか?」

 気になってそちらを振り返ったが、見えるのは体育館の屋根くらいで、特に気になる物は見当たらなかった。

「さっきの接触で眠りが浅くなっていた……? ふん、それにしても意外と勘のいい……」

 そんな呟きに向き直ると、ホタルが眉をひそめて、舌打ちでもしそうな顔をしていた。


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