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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第15話 嫌いな奴
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心配になってくる。

 最終的な目標は「同盟の引きこもり型防衛体制の確立」だ。その為には対帝国での戦力比をアスターテ星域会戦以前くらいに維持しなくてはならない。となるとやはり帝国領侵攻前に宇宙艦隊司令部で艦隊を統率しているか、統合作戦本部で軍事戦略に関与できる位置ぐらいにいなければならない。階級でいえば中将。あるいは将官であって、シトレかロボスの高級幕僚になることだ。

 だがシトレは俺に将来軍人として大成して欲しいとは思っていても、相当の時間がかかってもいいと思っているようだし、ロボスとは面識がない。中将になるとしても、帝国領侵攻は七九六年八月。約一二年で八階級を上らなくてはいけない。一階級あたり一年半。少尉から中尉へは一年だから良いとしても、相当のスピードが必要だろう。なにしろあのグレゴリー叔父が今年少将になったのだし、フィッシャーは現在中佐。七九六年時点でグレゴリー叔父が中将、フィッシャーは准将だから、実戦に参加しない場合は一階級昇格するのには五年必要と考えるべきなのか。クソ親父(=シトレ中将)の親心が次第に憎たらしくなってくる。

「おい、坊主。どうした、大丈夫か?」
 久しぶりに意識を別次元に飛ばしていた俺の面前で、マクニール少佐が手を振っている。
「これっぽっちで酔っちまったのかよ。将来の統合作戦本部長殿は案外酒に弱いんだな」
「まだ小官は二一ですよ?」
「俺が二一だったときは、徹夜飲みなんか当たり前だったぞ。もっとも飲まなきゃやってられなかったがね」
「……はぁ」
「明後日からいよいよ現場入りだものな。フィッシャー中佐が付いているとはいえ、初めて実戦部隊の白い目を浴びに行くんだから、緊張していてもおかしくない。よし。今日のところはこれでお開きにしてやる」
 そういうとマクニール少佐は腕を伸ばして大あくびをするのだった。

 翌々日。俺はフィッシャー中佐と共に、ハイネセン軍用宇宙港からシャトルに乗って、訓練中の艦隊へ査閲に赴いた。と、言ってもハイネセンのあるバーラト星系ではなく、複数の正規艦隊が同時に訓練できるほどの空間を持ち、補給と休養の望める有人惑星が近くに存在する、ロフォーテン星系管区内のキベロン演習宙域までである。

 既に査閲対象の艦隊は移動を開始しており、俺達査閲官は三〇人ばかりのチームを作って、連絡用の巡航艦で追っかけていくのだが、この巡航艦の中で査閲官専用スペースとなった士官食堂の一角で、俺達は書類や端末を並べつつ、深刻な表情で顔を見合わせていた。
「我々の査察対象はいうまでもなくラザール=ロボス中将閣下の第三艦隊だ……」
 今回の査閲チームの首席であるオスマン大佐が、軽く舌打ちしてからそう吐き捨てた。
「言うまでもなくロボス中将は気鋭の戦術指導能力をもつ指揮官だ。貴官らにあっては査察評価を
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