第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
25.July・Afternoon:『Philadelphia experiment』
[7/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
だ。彼女の肝煎りとなれば、黒子は受け取らざるを得ない。実際は『知っている』だけだが。
そこまで判断して美琴に声を掛けた。黒子が付いてくる事、勘違いする事を見越しての作戦である。
──男としては、情けないの極みだけどな……まぁ、今はこれで仕方ない。
ついっと視線を逸らし、若干頬を赤らめて。礼儀正しく両手で受け取った彼女。
そして、照れたような困ったような表情で。身長差から、自然、上目遣いに。
「あ……ありがとうございます、ですの」
辛うじて聞こえたほどに小さい、蚊の鳴くような声で。そう、口にしたのだった。
………………
…………
……
「飢える────」
風が吹いている。ひゅう、ひゅる、と。耳朶に、名状しがたき風斬音を残して。まるで、何かを耳打つかのように、何かを囁きかけるかのように。
だが、耳を貸す者など誰も居ない。否、誰もが気付かない。その風がこの数区画全てに吹き荒び、荒天を人々に知らせている事に。
「飢える、飢える────」
同じく、入道雲が山の稜線から頭を出す。蛸のように頭でっかちな入道、猛り狂うかの如く、黒く隆々と。ゴロゴロ、ゴウゴウ、と。雷鳴と、饐えた土の臭いを忍ばせて。
だが、気に留める者など誰も居ない。否、誰もが気付かない。その雨雲が、『樹形図の設計者』の予報通りに人々に家路を急がせている事には。
「「飢える、飢える、飢える────!!」」
それは、風と雨。合わさって曰く、嵐と呼ばれるもの。川に架かる橋桁に凭れ掛かる黒い雨合羽の褐色髪の美青年が陰鬱に水面に向かい呪うように呟くものと。
風力発電塔の頂きに座した、黄色い襤褸の外套を纏う翠銀髪の美少女が大空に向かい燦然と、祈るように謳うもの。
「────“水神クタアト”!」
悍ましき水妖の気配を溢れさせる、人面皮の装丁の魔導書“水神クタアト”と。
「────“■■■■”!」
忌まわしき戯曲の音色を放つ『黄色い装丁の魔導書』を携える、その二人の魔導師に喚ばれしもの。
人の関心を払い、無意識を呼ぶもの。ステイルが仕掛けたものと同じ、『結界』と、数々の秘術に呼ばれるものだ。
人々は風に背中を押されるように、夕立の気配に家路を急ぐ。彼らの予定通りに。残り、十五分。最後の追い込みに。
畏れる師の命で、敬愛する師の為に。範囲は最小
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ