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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
25.July・Afternoon:『Philadelphia experiment』
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ェンキンス』と呼ばれたその大栗鼠は、看護師長の肩から円らな眼差しを少女達に。
 それだけでもう、三人は────いや、涙子を含めて四人は、見ただけでも分かる程にメロメロだ。

「何だろう、この敗北感……」
「はは……まぁ、可愛いものには勝てないよ、実際。『彼』が居ると居ないでは、患者の態度がガラッと違うからね」

 長い胴体と尻尾の所為か、ちょっとした捕食動物くらいなら返り討ちに出来そうな体格。嚆矢としてもオオリスなど初めて見るので、それが正しいオオリスなのかどうかは判らないが。
 そんな彼の心中を見透かしたように、『黒茶毛の大栗鼠(ブラウン・ジェンキンス)』は長く鋭い前牙歯を見せながら、チチチと啼いて。

「ジェンキンスは、基在君の提案で飼い始めたセラピーアニマルでね。最初は半信半疑だったんだけど、今じゃ僕までメロメロさ」
「分からなくはないです、俺も撫でたいですから」

 鷹揚に笑う医師の言葉に、首是を返す。これがこの世の真理『可愛いは正義』か。その動きは素早く、気付いた時にはもう飾利の肩に駆け登って愛嬌を振り撒いている。
 困ったように喜ぶ飾利に頬擦りし、伸ばされた黒子の手に長い尻尾を擦ったり。同じく撫でようと恐る恐る手を伸ばした美琴が、その『電気』の為に拒絶するように尻尾で叩かれて落ち込んだり。

 そんな美琴を、飾利、黒子、涙子の三人が苦笑しながら慰めたり。
 緩やかな、穏やかな。気の抜けた炭酸飲料のような空気。昨日の地獄が嘘のような、平穏無事な現在を眺める。頑張った甲斐があった、と。

「コホン!」

 そこに、咳払い。苛立たしげに髪を掻き上げた、そんな空気を険悪にする看護師長の。大栗鼠は、その仕草に従ってか、再び彼女の肩に登っていく。

「では、そろそろ回診に行かないとね。それじゃあ、またね、佐天君」
「あ、はい。ありがとうございました!」

 やれやれとばかりに苦笑し、看護師長を伴い歩いていく医師の姿を見送る。その白衣が、扉の向こうに消えて。

「さて、それじゃあ……改めて」

 気を取り直す為に、音頭を取る。いつも通り、軟派に。軽口を、懐に隠し持つカード。コンビニで印刷して数を揃えた、ステイルのカードから『話術(テュール)』のルーンを刻んで。

「改めて、沙汰を申し渡そうか……『幻想御手(レベルアッパー)』なんて違法プログラムに手を出した佐天ちゃん?」
「は、はい……あの、本当にその節は、ご迷惑を」

 まるで、時代劇の奉行のように芝居掛かった口調で。今日、『風紀委員(ジャッジメント)』に知らされた、『幻想御手(レベルアッパー)』使用者への罰則を申し渡す。

「補習決定、夏休みが潰れるよ! やっちまったね、涙子ちゃん!」
「あう……や、やっぱり……」
「何が
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