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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――5
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 例えば今日。傍にいたら何か力に馴れただろうか。分からない。でも……。あの子のために戦う光の傍にいたかった。いるべきだったんだ。なのに、何でできなかったのか。
(私が光お兄ちゃんを怖がっていたから。もう分かっていたでしょ? 昨日リブロム君に自分でそう言ったでしょ?)
 それが出来なかった理由は、ただそれだけのこと。安心したと言いながら――やっぱり怖がっていたんだ。でも、もうそれもおしまい。
(やっぱり光お兄ちゃんは光お兄ちゃんのまま。変わってなんかいなかった!)
 あの子たちを何かから守ろうとしている。ただそれだけ。今まで私を守ってきてくれたように。それなら私は――
≪Master≫
 レイジングハートが静かに光った。
 今度は私が光を助けたい。今まで守ってきてくれたように今度は私も。それが、私が本当にしたかったことなのだから。それに今ならきっと――きっと、力になれる。
「行こう。ユーノ君! レイジングハート!」
「待て――!」
 クロノが何か言っていたが――構わない。一気に加速する。
 もう時間がない。私が。そう、他の誰でもない。他の何でもない。今ここにいる私が。
(私が光お兄ちゃんを――みんなを助けるんだ)
 今まで光がそうしてくれていたように。最初から、それが望みだった。




 全てが終わって。
 ぽっかりと浮かんできたのは、無力感だった。
 もちろん、無力感を味わったのはこれが初めてではない。今まで何度も味わい、噛締めてきたはずだった。だが、これは今までのものとは異なる。そもそも無力感と呼ぶのが正しいのかどうなのか。飛び降り自殺を止めようとして、逆につき落してしまったような。そんな絶望的な感覚だった。
『索敵範囲に御神光以下二名の反応ありません。……なのはちゃん達も該当区域から離脱したようです』
 エイミィからの報告が海風に混ざって空しく聞こえた。眼下に広がるのは、今までの騒乱が嘘だったかのように凪いだ海原。雲もない。何もない。何も残らなかった。
(僕は何をやっていたんだ……?)
 どうしようもない疲労感が、身体の芯から力を奪い取る。散々斬られ殴られ蹴られた身体が今さらになって痛み出した。まるで、嘲笑うように。
 この世界を救うための、最善の選択をしてきたつもりだった。だが、それならこの状況は何だ。説明不足。誤解。そんなものじゃない。
 高町なのはは……ユーノ・スクライアも、全てを理解したうえで決別を選択した。世界とあの三人を天秤にかけて、でさえない。
 そもそも。御神光は、一度だって世界を滅ぼそうとしたか?
 御神光を危険視していた理由は――未知の魔法の使い手である事と、僕らに対する敵対姿勢。そして、目覚めつつある『魔物』。
 だが、それらは本当にこの世界にとっての脅威だったか?

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