魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――5
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とまずそれに安心して、何とか周りを見回す。見えたのは、まだ残っていた雷に弾き飛ばされる金髪の子と、最初の雷に巻き込まれていたらしい光の姿だった。
「アルフ、行って……ッ!」
痛みを押し殺しながら、金髪の子が叫ぶのが聞こえた。
「クソッ!」
もう一人の女のひと――アルフがジュエルシードに向かって飛ぶ。――が、彼女よりもクロノの方が早い。このままでは間に合わない。
「え?」
すごい音と共に、風が吹き荒れる――いや、違う。光に吸い寄せられているようにして向かっていく。クロノはその場で踏み止まったが、ジュエルシードはそのままあっさりと光の向かっていった。
「取ったッ!」
そのうちの一つ――少しだけ外れていた一つをアルフが掴み取る。
「さぁ、早く行こう!」
「でも、光が!」
光が海面に叩きつけられるのが見えた。下が水とはいえこの高さだ。そもそも、光は酷い火傷を負っているはず。
『いいから行きな嬢ちゃん!』
叫んだのはリブロムだった。
『相棒はそう簡単には死なねえ。オマエらが無事ならなおさらだ!』
その言葉に、アルフは金髪の少女を強引に抱え、さらに海面に魔法を叩きつける。最初の雷には遠く及ばないが、それでも大きな水柱があがった。そして、それが収まる頃には、二人の姿は消えてなくなっていた。
「あ……っ」
言葉を失う。光は海に。あの子達は空に。それぞれが消えてしまった。三人と出会うチャンスになるジュエルシードも、もうない。何より、光は……。
「行こう、なのは!」
身体から力が抜ける直前。私の肩を掴んだユーノが叱咤の声をあげた。
「光さんがそんなに簡単に死んだりするもんか。きっとまだ生きてる!」
ああ。確かにリブロムもそう言っていた。でも、あんなに酷い火傷を――
「君なら見つけられる。ううん、君だけが!」
その瞬間、ユーノが何を言おうとしているのか、理解できなかった――が、
『今日はずいぶんと冴えてるじゃねえか、ユーノ!』
「さぁ、早くなのは! 君は、いつも通り高町光の妹として会いに行けばいいんだ!」
弾かれたように、身体が動いた。そうだ。簡単な事だった。最初からそうすれば良かったのだ。私は……高町なのはは高町光の妹で。高町光は私のお兄ちゃんなのだから。
(そうだよ。答えは初めから決まってたんだ)
何も悩む事なんてなかったんだ。初めから。何がしたいかなんて決っていたのだから。
(何を迷っていたんだろう。何を躊躇っていたんだろう)
踏み込めなかったのは――距離を置いていたのはきっと私の方。今までは自然に踏み込めていたその距離を超えられなかった。それは何故?
(それが出来なかったのは、私が臆病だったから。光お兄ちゃんに邪魔だって思われたくなかったから。ううん、それも違う。それだけじゃない)
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