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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――5
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ない。絶望感と共に認める。
 こんな怪物に対抗する術なんて、自分にはない。そんな術を、自分は何一つ持っていない。何もできない。
(フェイト……っ!)
 それでもなお牙をむき出しにする。ここで、この女を殺す。もう、考える事はそれだけでいい。ただ吼える。それ以外の何もいらない。
「いちいち私を煩わせないでくれるかしら?」
 いくら膨大な魔力を持っていたとしても、所詮この女はただの研究者だ。特別な戦闘訓練など受けていない、ただの人間に過ぎない。狼の速さについてこれる訳がない――はずなのに。
「ああああああッ!?」
 蛇のように蠢く雷が、周囲一帯を無造作に薙ぎ払う。速さなんて気にもしない。周囲一帯を一掃できるなら、そんなものは必要ないと言わんばかりに。
(今の魔法は何だ……?)
 あんな魔法をアタシは知らない。この女の魔法はミッド式のはずなのに、理解できない。術式が理解できないとか、そんな些細な事じゃない。何かがおかしい。
「ジュエルシードを……使っているのか?」
 無様に地面を転がりながら、呻く。
「使えない石ころを集めさせるとでも思っていたの?」
 当然のように言い放つ。だが、それだけじゃない。魔力が増幅されているだけでは――この何かが狂った感覚は説明できない。もっと深刻な何かが起こりつつある。
「クソっ!」
 その正体を見極めている暇などないし――必要もない。アタシ達には、そんな事はもう関係ない。例え、この女が本物の怪物になろうとしていたとしても――アタシはそれを道連れにして地獄に行けばいい。やる事は何も変わらない。
「いい加減煩わしいわ」
 無数に這いずりまわる雷の蛇を掻い潜る。だが、数が多すぎた。ガタが来た身体ではとても全ては捌ききれない。
「が――あああああああああッ!?」
 両腕。両足。胸。腹。太腿。身体中に蛇が絡みついた。血の味を感じるほどに叫ぶ。だが、それも一瞬だった。苦痛が消えた訳ではない。肺の空気が全て絞り出されただけだ。
「あっ――うぁ――ぎぃ――ひぐっ」
 得体の知れない悲鳴。毒のように注ぎ込まれる電撃に、身体中がアタシの意思を無視して好き勝手にのたうちまわる。肺が引き攣って満足に呼吸もできない。
「そんなに喘ぎながら腰を振るなんて。何を盛っているのかしらね、この雌犬は」
 あの女が嘲笑うのが聞こえた。蛇が蠢く。身体を締めあげ、捩じりきり、引き千切るように。まるで本当に大蛇に締めあげられているようだった。身体中を締めあげ、喰らいつき、電撃という毒を注ぎ込んでくる巨大な毒蛇だ。
(こんな、魔―…法……アタシ、知らな――いッ!?)
 消えそうになる意識を必死でかき集める。手放したら、二度と戻ってこない。それは分っていた。だが、手放さずに済んだのは――あの女が加減しているからだ。いつでも八つ裂きに
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