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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――5
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出さなければならない。




 気がついた時、アタシ達はすでにそこに連れ戻されていた。いや、連れ戻されたと言うのは適切ではない。回収された、と言った方が正しい。目が覚めた時、アタシ達は部屋の片隅にゴミのように打ち捨てられていた。
「クソッ!」
 バルディッシュ――フェイトのデバイスからは、すでにジュエルシードが抜き取られていた。あの女は優れた技術者だ。時間さえあればデバイスを誤作動させて、中身を抜きだすくらいは造作もないはず。だが、そんな事はどうでもいい。あんな石ころなんて欲しければいくらでもくれてやる。
「フェイト、フェイト!」
 フェイトは、傷の手当てもされないまま部屋の片隅に打ち捨てられていた。その身体に触れて、改めて思い知る。傷の正体。それは火傷だった。あの女の魔法によるもの。
 光達が庇ってくれなかったら、あのまま死んでいたかもしれない。
 死。……そう言えば、光はどうなった?――あれだけの火傷を負い、あの女の魔法を受け、あの高さから海面に叩きつけられた。
(それだけの傷を負えば、さすがのアイツだって……)
 何でこんな事になってしまったのだろう。空っぽだった心の中で、それが呼び水になった。虚ろな心をどす黒い何かが満たして行く。
 管理局か。あの女か。それともそれより大きく漠然と広がる――例えば、運命とでもいえるものか。あるいは、それを操り嘲笑っている何かか。……その全てか。何に対してか自分でもわからないまま、ありったけの感情をこめて、罵ろうとした。
「―――ッ!」
 だが、言葉にならない。言葉になる程度の安っぽい感情ではなかった。ただ、本能に従って吐き出す。喉が裂けるまで吼える。自分の本質を叩き起こすように。
(……ごめんよ、フェイト)
 覚悟を決めた。もっと早く決めておくべきだった。例えその結果、自分が消される事になったとしても構わない。
 主を寝かせ、立ち上がった。ありったけの魔力を叩き起こす。あの女には遠く及ばない。そんな事は分っている。だが、それがどうした。
(アタシには爪も牙も残っている)
 元よりこの身は天性の狩人だ。たかが人間一人引き裂くなんて事は、当たり前のようにできる。例え魔力が及ばなかろうが――手足が引き裂かれようが、その喉笛を喰い千切る事が出来る。
「さよなら、フェイト」
 もう会う事はないだろう主に告げる。例え差し違えてでも、あの女を殺す。フェイトはアタシを怨むだろうし、契約も解除されるに違いない。だが、それでも。
 フェイトを――大切な主をこの地獄から解放できるなら、アタシはそれでいい。アタシはきっと笑って逝ける。後悔など何もない。
(光、後は任せたからね)
 アイツはまだ生きている。あの本はそう言った。それなら、後の事はあの魔導師に――
あの魔法使いに託せばいい
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