Fourth day
[4/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
郎はどきりと心臓が音を立てることに気が付いた。夢は夢。現実とは混じり合わない、幻想の世界。だから、それを気に病む必要は無いのだ。
「そう、だな」
そう答えると、安心したのか、自分に睡魔が襲ってくるのを感じた。だが、このまま眠っても、またあのような夢を見てしまうような気がする。どうしたものかと考え、そばに一成がいることを思い出す。
「一成、手握ってもいいか。そしたら、夢の続きを見ずに済むような気がして」
口に出してから、しまったと感じた。いくら何でも高校三年生の友人に頼むことではなかったと。撤回しようと考えていたが、言われた本人である一成は何食わぬ顔で了承の声を上げる。
「構わん。遠坂が迎えを呼ぶと言っていた。それまで、眠るといい」
彼は布団の中にあった士郎の右手を探る。すぐに自分の右手に、彼の手の体温を感じた。ぎゅっと力を入れて握ると、彼も握り返してくれる。誰かがそばにいてくれる、その暖かさに安堵しながら、士郎はゆっくりと目を閉じた。
?
右手に感じていた暖かさは、いつの間にか消えていた。その代わり、誰かの体温を体全体に感じる。ふわりふわりと浮いては沈む意識の中、自分が今誰かに背負われているという事実だけを士郎は認識していた。急ぎ過ぎない歩調は、意識の覚醒を遠ざけるものだ。瞼を空けることは出来ずにいると、彼の耳に会話が聞こえてきた。
――全く、何故私が……。
――仕方ないでしょ。私も桜も、士郎抱えて家に帰れるほど、力が強くないんだから。
――君であれば……いや、何でもない。何でもないから、その振り上げた拳を下ろして……ってイタッ。
――先輩、大丈夫かしら。
――サクラ、その男に担がれている、ボロ雑巾みたいなのがあなたの想い人なのかしら?
――そ、そんなんじゃ、ないけど。って、先輩の評価酷くない?
――さっきから気になってたんだけど、桜。そいつ誰よ。
――あれ、遠坂先輩、噂聞かなかったんですか?
――噂? 今日はあいにく忙しくて、特に耳に入ってこなかったけど。
――彼女は、今日転校してきた、うちの学校唯一の外国人の、シヴァさんですよ。
時は本日の朝のホームルームに遡る。
いつものように衛宮邸から登校してきた桜は、朝の士郎の様子を思い出していた。ぼんやりとしていた彼は、ただの寝不足だと言っていたが、それだけで片づけていいものか。自分の周りで話している級友たちの話し声も気にならないくらい、彼女は心配していた。彼の教室に行ってみようか、でもさっき別れたばかりだし。
ぐるぐると考えているうちに、始業のチャイムが鳴っていた。教室に入ってきたのは、自分のクラスの担任の中年の男性教師。日直に号令をかけさせ、出席をとっていく。次々と呼ばれていく名前を聞き流していく。出席はとり終わったようで、教師
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ