オーバーロード編
第10話 探しに行く
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光実はふり返り、舞踏にでも誘うように碧沙に手を差し出した。
碧沙は笑って光実の掌に手を預けた。――まるで聖書の失楽園だ。
「それじゃあお世話になりました。さようなら」
「ごきげんよう」
光実と碧沙は呆気なく大クラックを潜り越えた。
兄妹に天が味方したようなタイミングで、大クラックは消滅した。
…
……
…………
ある日。ドルーパーズでバイトしていた紘汰は、ユグドラシルの湊耀子から呼び出しを受けた。
無視したかったが、そういう部分で律儀に顔を出してしまうのが葛葉紘汰である。
ユグドラシル・タワーの赤いラボには、駆紋戒斗もいた。彼も耀子に呼び出されたという。
「呉島光実が妹の呉島碧沙を攫って逃亡した」
凌馬は大仰に、焼け焦げた跡と壊れた機械の部品が散らばるラボを示した。
「どうやらヘルヘイムで行方知れずになった長兄を探す気らしくてね。我らがラプンツェルまで掻っ攫われてしまった」
「天下のユグドラシルの警備も高が知れるな」
さすが戒斗。怖いもの知らずの発言だ。
「どうして俺たちを? そいつらを追う人材なら、シドと角居裕也がいるだろうが」
ここで紘汰は目を横に流した。親友を敵側として語られたことが悔しかった。
「二人とも今は別件にかかりきりでね。加えて、事前に細工してたらしく、我が社のロックビークルは全て壊されていた。光実君に手が出せなかったロックビークルを持つキミたちが、最後の希望というわけだ」
紘汰は低い声で凌馬に問うた。
「……ミッチとその長兄とやらは、ユグドラシルの関係者なのか?」
「ああ。我々のチームのリーダーとメンバーの一人だ。いや、だった、と言うべきかな」
紘汰は理由もなく確信していた。例の白いアーマードライダー。あれが光実の長兄だと。光実がクリスマスゲームで白いライダーを探りたいと執拗に訴えたのも、だから。
光実は知られまいと隠していた。
ビートライダーズである自分の兄が、敵対するユグドラシルの幹部だと知られて、仲間から弾き出されるのを恐れた。
(隠し事されて悔しいよ。悔しいけどさ。そんなんで嫌うほど、俺、ミッチのこと軽く思ってねえのに)
「碧沙君は無傷で連れ帰ってほしい。光実君は、まあ任せるよ。ユグドラシルからはクビで出禁ってとこだけ伝えといて」
「分かった。――戒斗、行こう」
戒斗は紘汰より先にコートを翻して歩き出した。紘汰はそれに続く形で、赤いラボを出た。
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