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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十話 苗川攻防戦 其の二
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令です!本隊より一個大隊一日分の糧秣を駄載させ向かわせます!
明日の朝まで此処でお待ちいただければ、合流させるとのことです」
 この糧秣は正面からの早期突破は不可能と判断したシュヴェーリンと参謀陣が捻出したものであった。無論、糧秣の枯渇によって士気崩壊すら現実味を帯びており、が反対意見も出たがシュヴェーリンはそれを押し切り、カミンスキィに全てを賭けたのであった。
「――感謝する。そう閣下に伝えていただこう!」
 この瞬間にカミンスキィは栄光を求める野心家の直観でこの戦の結末を自分が掌握していることを理解し――歓喜に身を震わせた。


二月二十二日 午前第七刻半 大隊本部
独立捜索剣虎兵第十一大隊 首席幕僚 新城直衛 

 上流の渡河点を日に数度、定期的に探索し、さらに剣虎兵を配置する事で奇襲を避ける体制は、導術兵への負担と引き換えに現在、多大な成果を上げていた。
「――輜重部隊が上流へ向かっている、か。
良くやってくれた金森二等兵、半日ほど休め。後で側道の防衛にあたってもらう、術力切れのないようによく休むように」
よろよろと導術兵用の天幕へと下がる金森をちらりと見るが、馬堂少佐はなにも言わずにすぐに首席幕僚へと視線戻す。
「今日中、遅くとも明日には迂回した騎兵と交戦しなければならない、か。
予備隊をお前さんに任せると言うことでいいかな?
鋭兵中隊と剣虎兵二個小隊に騎兵砲を四門回す、剣虎兵小隊の指揮は西田少尉と漆原少尉、こんな所かな――やはり、剣虎兵将校の不足が辛いな。ある程度単純な指示でないと兵が混乱する」
 唇を噛み締める旧友を
「はい、大隊長殿。そんな所でしょう。」
 それに頷いて大隊長は側道方面の指揮官として新城直衛大尉を任命した。
「新城大尉、そちらの指揮は君に一任する、
それと可能ならば士官を生け捕りにしてくれ」
 大隊長が平然とつけた注文を聞き、次席指揮官はうんざりとため息をついた。
「また無茶を。何故ですか?」
 ――完全に無力化されてでもいない限りは進んで俘虜をとるべきではない。
新城の経験上、匪賊討伐の際に俘虜を取ろうとして刺される事が多く、
「緊急時の手札になるからさ。
貴重な猫を投入するのだから馬を脅かすとかして、落馬した奴とかを見繕ってくれ。
何なら兵でも良い、取り敢えずそれっぽい、なまっ白い偉そうなのをふん縛って連れてきてくれ」
「まるで人攫いだ」
「――人攫いだよ。営利略取だ、いよいよもって匪賊仕事だがやってもらうぞ」
新城の視線を受け流して豊久は飄然とそう云った。
「防衛を最優先しますので確証はいたしかねます」
「あぁこちらの兵を殺してまでとは言わないさ。
だが同胞が居るだけでも幾らかはマシになるから可能な限り頼む、出来れば貴族の士官が望ましいが贅沢は言わない」
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